HOME  >>  トピック

トピック

マイナンバー制度

平成26年12月27日

2014年も慌ただしく暮れようとしている。 税の世界では今年の最大のトピックは消費税増税であろう。 消費税増税後の景気の落ち込みが、安倍総理に総選挙を決断させたのであるから、税は社会の重要な構成要因であり変動要因と言える。

2015年は話題になっている相続税増税がいよいよ実施されるが、 実は我々の世界でより注目されているのがマイナンバー制度の導入である。 正確には2016年からの導入ではあるが、2015年の10月頃には個人番号等の付番・通知が行われる予定である。

マイナンバー制度とは社会保障・税番号制度のことであり、国民一人ひとりに対し個人番号を、 企業に対し法人番号を付番し、個人番号及び法人番号の活用及び保護を図る制度のことである。 これは「複数の機関に存在する個人の情報を同一人の情報であるということの確認を行う」ことにより 「社会保障・税制度の効率性・透明性を高め、国民にとって利便性の高い公平・公正な社会を実現するためのインフラである」 というのがうたい文句である。

つまり日本国内に暮らす全員の個人情報を一つの番号で管理する制度であり、複数の機関にわたる名寄せができるということである。 それにより「行政サービスの効率化や税や社会保険料の未納を防ぐことができる」ということであるが、 国税庁の真の狙いは預貯金等の名寄せをすることにより、納税者の情報をより正確につかみ脱税の防止や摘発をすることである。

それが証拠に12月20日の日経新聞によると政府は2018年から銀行の預金口座にも適用する方針を固めたとのことである。 登録は当面任意として、2021年以降に義務化の是非を検討するようである。 来年はいよいよ全ての情報が管理される時代の始まりとなる。 来年の今頃はこの話題が新聞紙上を賑わさせているのではないかと思う。

今年は午年ということで「駿馬が天高く駆け上がるような飛躍の年に」と願ったのですが皆様いかがでしたでしょうか? 来年は未年です。 未は象形文字で木の枝葉が茂った様を表すとされ、未の月にあたる6月は様々な植物が成熟する季節です。 未の字には豊作への願いも込められています。 皆様にとって来年も「実り多い豊かな年」になりますことをお祈りいたします。 良いお年をお迎えください。来年もよろしくお願いいたします。

台湾と税金

平成26年11月30日

久しぶりに事務所の研修旅行を実施し台湾に行ってきた。 旅行が平日にかかってしまったので、お客様にはご迷惑をおかけしてしまいました。 従業員の希望で台湾にしたが、親日的で、日本と気候風土も似ていてあまり外国という感じではなかったけれど、 久しぶりに異文化に触れ刺激を受けた旅行だった。

そのなかでも一番印象的だったのがキュウフン観光だった。 宮崎駿監督の「千と千尋の神隠し」のモデルになったところとの話がある。 映画の中で両親が豚になってしまうシーンがあるが、まさにその場所ではないかと思われるようなところで、 狭い路地を挟んで多種多様なお店が並び、ありとあらゆる全てのものを食べつくすようなエネルギーを感じた

社員には感想文の提出をしてもらったが、異文化に触れた感想や台湾の税制のことを報告してくれていて、見聞を広めるという意義はあったようである。

台湾の所得税は総合所得に対して6%〜40%の超過累進税率により課税されるようだ。 日本と違うところは、年末調整がなく全員が確定申告をしなければならない制度になっている点だ。

消費税は営業税と呼ばれ5%である。 くじ付きのレシートになっていて8ケタの番号が付されており、 2か月に一度抽選によって最高200万元(760万円)が当たるとのことである。 これは消費税の徴収漏れを防ぐためのアイデアらしい。 くじ付きにすることで、消費者がレシートを要求するため店側は売り上げを除外できず脱税を防止する仕組みらしい。 今はレジに商品を通すと国税局にデータが送付されるようになっているとのことである。面白い制度である。

さらに面白いのが相続税である。 相続税の税率は2%〜50%、 贈与税は4%〜50%といずれも超過累進税率だったのが2009年に相続税も贈与税も一律10%に改正されたようである。 これは、富裕層が高い相続税を嫌って海外に移住するのを防止するために一律課税に改正をしたとのことである。 なお、現在カナダ、オーストラリア、ニュージーランド、スイス、香港、シンガポールなどの国は相続税を廃止している。

日本は相続税の増税が2015年から実施されるが、同時に海外移住による税逃れ防止のため、 富裕層の株式含み益に出国時に課税をするという制度設計を行い、これも2015年度からの実施を予定している

法人が低税率の国を選んで本店を置くように、個人も同様に低税率の国を選んで移住するという時代になるのかもしれない。 折しも日本は年末に総選挙が実施される。 日本の借金はついに1,000兆円まで膨れてしまっている。 これからの日本の将来像を、どの政党がどのように描くのかを、しっかりと見極める選挙にしなければならないと思う。

ノーベル賞

平成26年10月31日

先日、ノーベル物理学賞に赤崎勇氏、天野浩氏、中村修二氏の受賞が発表され、久しぶりの明るいニュースで日本中が沸き立つような感じだった。 ノーベル財団は高輝度、低消費電力白色光源を可能とした青色発光ダイオード(青色LED)の開発と製品化への貢献を高く評価し受賞理由とした。 開発から20年が過ぎ現在ではあらゆるところで青色LEDが採用され、まさに光源革命を起こしたといっても過言ではない。

今回の受賞者の一人である中村修二氏は、2001年に開発当時在職した日亜化学工業を特許権帰属と対価等に関して提訴し、一躍時の人になった。 その年の日本経済新聞の正月号の一面に『世界的発明をしながら日本を捨てた男』というタイトルで記事になったのを今も鮮明に覚えている。

中村氏は今も「開発の成果物は会社ではなく個人に帰属するべきである」と言っているが、 私は開発費や給料を会社が支出している以上、やはり成果は会社に帰属すべきものだと思う。 彼はそういいながらも、一番感謝している人に日亜化学の創業社長である小川信雄氏をあげ 『彼の研究支援がなかったらこのノーベル賞はなかった』といって感謝の気持ちを述べている。 しかしその一方で『研究の原動力はアンガー(怒り)だった』とも述べ今も複雑な心情があるようである。

しかし、中村氏の偉大なところは、四国の片田舎の高校(大洲高校)から徳島大学を経て徳島の日亜化学工業に就職し、 四国から出たことがなかった人間が、ノーベル賞と言うとんでもない賞を受賞したことである。 彼はどんな環境でもどんな田舎でも夢と熱意があれば成功できることを体現したと言える。

ただ中村氏の考えは研究者や技術者としての立場からの発想であり、経営者としての発想ではない。 経営者的発想を持てる従業員をいかに多く作れるかが良い会社の条件だし、大切なことだと思う。 中村氏は実は京セラを受験し合格している。 その時の面接官があの稲盛和夫氏だったということである。 家族の養育の関係から地元の日亜化学に就職したようであるが、京セラに就職し稲盛氏の薫陶を受けていればどうなっていたか興味があるところである。

実を言うと、私と中村氏とは高校時代の同級生である。 彼の今回の受賞は大変うれしいし、誇らしくもある。 彼が今後、受賞を糧にさらに研鑽をつみ素晴らしい研究成果を上げ、世の中に一層の貢献をされることを期待してやまない。

相続税増税と対策

平成26年9月30日

皆様すでにご存じだとは思いますが、来年(平成27年)1月1日の相続から相続税が増税されます。 今回はその増税の内容と対策について触れてみます。

今回の増税の一番の要因は、相続税の計算上、相続税の基礎控除といわれる控除額が大幅に減額されることです。 基礎控除額は次のように縮小されます。

5,000万円+1,000万円×法定相続人の数 ⇒ 3,000万円+600万円×法定相続人の数

日本人の標準世帯つまり配偶者と子供2人の家族構成ならば現在は8,000万円の控除が 来年1月1日からは4,800万円の控除しかなくなるわけで4割もカットされるわけです。

例えば2,400万円の自宅、2,400万円以上の金融資産等があれば相続税の対象になってしまいます。 この場合、自宅を50坪とすれば、坪当たり48万円以上の評価であれば課税されることになります。 坪48万円以上というのは松山でいえば住宅地区としてはかなり高い地域となり、持田町とか岩崎町あたりになり、 いわゆる高級住宅地といわれるところしか対象になりません。 こうしてみると、松山あたりで新たに相続税の課税対象者となられる方は、現実的には 自宅の評価が2,000万円までで、金融資産等が3,000万円以上ある方達ではないかと思います。

このように松山のような地方でも相続税の課税対象者が増えます。 全国ベースでは今回の改正で課税対象者が4%から6%に増えるということです。 しかし首都圏では二人に一人は申告が必要になるとの試算もあり、相続税は今まで一部の富裕層にかかる税金のイメージだったのが、 より身近(?)な税金となるようです。 

最近とみに相続税対策の記事や、対策セミナー等の開催を色々な媒体で目にしますが、あわてることはないと思います。 親と同居している場合等には小規模宅地特例といって240平方メートルまでの自宅は80%の評価減ができます。 この特例は平成27年の相続からは330平方メートルまでに拡大されます。 生命保険や退職金の非課税枠の活用や、長年にわたり合法的に贈与をするなど<じっくり対策をすれば相続税の軽減は図れます。 ただ、色々と注意しなければならない点もありますので、詳しくは当事務所にお尋ねください。

人は何のために生きるのか

平成26年8月31日

4月の原稿で案内した稲盛和夫氏による公開フォーラムが去る8月6日にひめぎんホールで開催され、 3千人もの方が参加され長時間にわたり熱心に聴講されました。

内容は、 『我々の歩む人生とはどのようにつくられているか』ということを次の三つの視点から講演されました。 第一には、陰隲録という中国の古典の話から『因果の法則』が存在することを、第二には、 現在の大宇宙をつくり今なお膨張を続けているいわゆるビックバンセオリーと呼ばれる宇宙生成の話から、 善き思いは万物を成長発展させる『宇宙の意思合致する』ということ。

また、最後に稲盛氏自身の経験からは『善きことを思い、善きことを実行すれば、運命は必ず善き方向に変わっていく』ことを話され、 自らの心しだいで人生は好転する。 つまり自分の心を少しでも純粋で美しいものに変えていくように努力すれば、 自分自身の人生を素晴らしいものへと好転させていくことができるという話でした。

人生の目的とは人生という道場で人格を高めよう、自分の心、魂を立派なものにしていこうと繰り返し努力すること。 つまり魂を磨くことにある。 そのために人は生きるのではないかということでした。

公開フォーラムに関しては新聞に一回広告を出したのみであったにもかかわらず、3千人をはるかに超える申し込みがあり、 事務局には締め切り後も「是非聞きたいのだが何とかならないか?」という多数の問い合わせがあったとのことである。 この愛媛においても稲盛氏のファンが数多くいらっしゃることが分かり大変嬉しく思いました。

当日の会場は、稲盛氏の講演において醸し出す独特の静寂さと緊張感があり、途中で退席される方は一人もいらっしゃいませんでした。 多くの方が、多様な価値観に翻弄されがちな現代のなか、稲盛氏の講演に人生の道しるべとなるもの求められているのだと感じました。

稲盛氏は全従業員の幸福を実現しすることが経営者の最大目標であるといつも言われています。 そのためには純粋で美しい心、自己犠牲も厭わない姿勢で努力することが求められるのだと思います。 そして最後に『自分の人生は良かった。この人生は魂を磨くことができた素晴らしい人生だった』 と思えるような生き方ができれば最高の人生なのだ、と心から思うことができた講演でした。

法人課税改革

平成26年7月31日

先月は法人税減税について書かせていただいたのだが、今月も法人課税改革について述べたいと思う。 立地競争力を高めるとともに我が国企業の競争力を強化するために法人実効税率を引き下げるという方針のもと、 政府税制調査会では法人税改革について次のような課税ベース拡大措置の取りまとめがされた。

(1)租税特別措置の整理 (2)欠損金利用の制限 (3)受取配当の取り扱いの変更 (4)減価償却費の定額法への変更
(5)地方税の損金算入の制限 (6)中小企業特例の見直し (7)公益法人課税の見直し (8)外形標準課税の見直し

以上の8項目が検討されているとのことである。 各項目の詳細について述べると紙面が不足するので、詳しくお聞きになりたい方は当事務所にお尋ねください。 ただベースになっている考え方は利益を出している企業の税負担を減らして、 その代り今まで制度の恩恵を受けている企業や、赤字等で税負担をしていない企業に税負担をしてもらうというものである。

その結果今回の改革案は、そのまま成立すれば多くの中小企業は法人税減税どころか増税となってしまう可能性が高くなる。 何より問題なのは中小企業はオーナー企業が多数であり、そういう企業がうまく節税をして納税をしていない。 けしからんという風潮があることである。 そんなことはないのであるが中小企業退場論まで出てきている。

実際は中小企業も国内経済の付加価値を作り出し、雇用の受け皿になる等、経済社会の重要な役割を担っている。 第一に従業員の給与から発生する所得税は、中小企業が3兆円納付している。 全体の38%を負担しており大企業の28%よりも多く納税している。 社会保険料も全体の42%の12兆円を負担しこれも大企業負担率(41%)よりも多い。 固定資産税は大企業の負担額より少ないが1.7兆円負担している。 また、国内銀行の中小企業融資残高は257兆円あり貸出残高の62.7%も占めていて、ステークホルダーも多数存在しているのである。

しかし、中小企業は残念ながら財務体質も脆弱な企業が多い。 そこに多額な増税をされればもたなくなる可能性がある。 今こそ適正な改革が行われるよう中小企業も関係省庁に働きかけることが必要だと思う。

法人減税

平成26年6月30日

W杯の真っ最中であるが、残念ながら日本は一次リーグで一勝もできずに敗退してしまった。 まだまだ世界との差は大きかったようである。

さて国内においては、アベノミクスの第三の矢である成長戦略の一環として、数年かけて法人税率を20%台に引き下げるという法人減税が話題となっている。 ただ減税の財源をどこに求めるかで色々な案が検討されているようだ。

税率引き下げに伴う減収を補うために以前からよく議論されるのが、課税ベースの拡大である。 つまり政策減税の縮小廃止である。 特に試験研究費の税額控除がターゲットになっているようである。 これだけで3,700億円が減税されているとのことである。 また政府税制調査会は大企業だけでなく中小企業にも負担を求める考えを示した。 軽減税率の縮小や赤字法人課税の強化が柱になるようである。 現在中小企業(資本金1億円以下)においては所得の800万以下を15%の税率とし大企業より10.5%優遇されている。 これを縮小すると同時に、赤字でも一定の税金を支払う外形標準課税を中小企業にも拡大する検討がなされているが、 どの案も経済界や商工会議所などが反対の声を上げていて、実現への道筋は見通しにくくなっている。
 しかし、この厳しい財政状況の中なぜ法人減税が検討されているのであろうか?当然成長戦略のために必要な施策ではあるが、これは一時的な政策減税ではなく、 恒久減税として検討されている。 何故なのだろうか?

それは世界との比較である。 日本の実効税率は35.64%であるが主要国の実効税率は、アメリカ40.75%、フランス33%、ドイツ29.55%、中国25%、韓国24.2%、シンガポールに至ってはなんと17%である。 特にアジア諸国の実効税率が安くなっている。 税もコストであるので法人税が高ければコスト競争力に影響を及ぼし、外国企業が日本に進出しづらくなるだけではなく、 輸出等においてもコスト面でハンディを負ってしまうことになるからである。

現在25年度の法人税の税収は約8.7兆円で税収の20%を占めている。 ちなみに所得税は13.9兆円で約30%、消費税は10.6兆円で25%である。 少なくなったとはいえ国家の基幹税としての役目を担っている。 以前から財務省は法人税は基幹税としての役目は終わったと言っていたのだが、財政のことを考えると法人税収を減らすわけにはいかないようである。 しかしそうすると何のための減税だろうか? 税率を引き下げても企業の負担額が変わらないのであれば意味がないと思うのだが?

損益分岐点比率

平成26年5月31日

上場企業を中心に企業収益が改善し、2014年3月期の株式配当は過去最高の6.9兆円になるとのことである。 さらに2015年3月期は経常利益が2%増加し7年ぶりに最高益が予想されている。 これがアベノミクスの効果かどうかは議論が分かれる部分もあるが、日本がデフレ経済から脱却する契機になったことは間違いないと思う。

最近はアベノミクスも手詰まり感があったのだが、安倍首相は昨年12月に保守政権にもかかわらず政労使会議を開催し異例とも言える賃上げ要請を行なった。 第四の矢ともいえるこの要請が奏功して民間企業では久しぶりに賃上げの動きが広がった。 企業業績は消費税の増税も吸収し、来期は最高益を伺うところまで回復してきた。

しかし、その内容を分析すると、企業の必死の努力が実を結んでいる要素もあるようである。 日本企業はデフレで売り上げが伸びない中、世界で戦える高付加価値の強い製品と強いコスト構造の企業体質を身に着けたと言える。

というのも、大和総研によると損益分岐点比率が2009年3月期は87%だったのが、2014年3月期は77%と大幅に改善された。 さらに、2015年3月期は75%まで下がる予想である。損益分岐点比率とは損益分岐点売上高÷売上高×100で求められる指標で低いほどコスト構造が強い会社である。 言い換えれば安全度が高い会社である。 75%の損益分岐点比率の会社は25%の売り上げが減少してトントンつまり損益分岐点になる会社である。 この指標をみると日本企業は多少の逆風が吹いても世界で稼ぎ成長できる実力を身に着けたと言える。

しかしながら、問題は国内経済の空洞化が進展しているということである。 特に地方においては生き残るためのビジネスが枯渇しているといってよい。 東京を中心とした首都圏経済とわが愛媛のような地域経済とは残念ながら雲泥の差がある。 地方においてこそ高付加価値の強い製品や、高付加価値サービスを提供できる企業が待ち望まれている。

そのためにはどうすれば良いのだろう? 急にそんな高付加価値の強い製品などできない。 それには当然、今日よりは明日、明日よりは明後日、と絶え間ない改良改善をおこなっていく愚直な努力が要求されるが、 時には発想の転換という英断が必要とされることもある。 結局は『何としてでも』というどれだけ強い思いを持つかによるのだと思う。 思いは力である。

人生・仕事の結果=考え方×熱意×能力

平成26年4月30日

私の故郷には中学校の卒業生が還暦の年に集まって、藤縄神楽(愛媛県の無形文化財)の奉納を受け会食をするという催しが父の代以前から行われています。 私も今年晴れて還暦を迎えることになり先日参加してきました。

中学以来45年ぶりに会う同級生なので、皆一様に年を取って、名前を聞かないとわからない人が多く、あちらこちらでお互いに「誰だったっけ?」という会話が聞こえてきました。 久しぶりの再会なので話は尽きないのですが、還暦ともなると皆それぞれ歩んできた年月の重みがあり、一人一人の人生模様が感じられました。 そんな中でも中卒で就職した仲間がしっかりした人生を歩み、幸せな人生を送っているように感じられ本当に立派だと感心させられました。

その時に『人生・仕事の結果=考え方×熱意×能力』という稲盛氏の言葉を実感しました。 これは稲盛氏が能力はあまりなくても熱意と考え方で素晴らしい人生が送れるということを自らの体験を通じてたどり着いた人生の方程式です。

つまり、人生や仕事の結果はこれらの三つの要素の掛け算で決まるというものです。 能力とは才能や知能といったものですが、これは多分に先天的な資質を意味します。 それに掛かるのが熱意です。 熱意は成功の大きな要因です。 自分にはそれほどの才能はないと思って、執念ともいえる熱意をもって人一倍努力していけば物事は必ずと言っていいほど成功します。 しかし、その熱意が正しい考え方に基づかないものであれば、成功の要因であったその熱意、執念が没落へのきっかけとなります。

そこで一番大事なのが考え方です。 この考え方次第で人生は決まってしまいます。 考え方とはいわば心の在り方や生きる姿勢のことです。 つまり哲学、理念、思想といわれるものです。 日本は今、民主主義国家でありどんな考え方を持とうが自由ですし大切な権利です。 しかし、 「その自由な心で、 自分がどのような考え方を選択するかによって、 人生は大きく変わり、 運命さえも180度変わってしまうことをどれだけの人が知っているのだろうか?」 と稲盛氏は考え方の大切さを述べられています。
「正しい考え方で努力すれば皆一様に素晴らしい人生を送ることができる」と常日頃から言われています。 そのことを一人でも多くの人に知ってもらいたいという思いで全国で稲盛和夫公開フォーラムが開催されています。 実は今年の8月6日松山市でも公開フォーラムが開催されます。 せっかくの機会ですので是非聞いていただけたらと思います。 連絡先は089-951-3444(稲盛和夫公開フォーラムin愛媛事務局)です。

資金調達

平成26年3月31日

消費税増税を間近に控えて、 駆け込み需要に沸くお客様がある一方で、 あまり関係がないお客様とか会社によってその影響も様々であるが、 増税後の4月〜6月にかけては反動減があると予想されている。 安倍首相もそれを懸念して、5兆円を超える13年度補正予算を成立させ色々な経済対策を実行している。 企業に賃上げを促す傍ら、補助金制度を拡充し、優遇税制を成立させ民間設備投資の推進を図っている。 そういう意味では事業者にとって設備投資の好機であると言える。

ただ設備投資には多額の金額を要することが多いので、問題となるのが資金調達である。 やはり最後は金融機関からの資金調達が必要になる。 その時には金融機関は色々な指標等(長期固定適合率、ギアリング比率、自己資本比率、インタレスト・カバレッジ・レシオ等々)をもとに審査をするのであるが、 そのなかでも重要になると思われる借入月商倍率債務償還年数について述べようと思う。

借入月商倍率とは借入金残高÷月商で求められる指標で借入金の残高は売り上げに対してどのくらいかの割合になっているかを見る指標である。 一般的にこの数値が3倍以内なら青信号、月商の6倍つまり年商の半分を超えて来ると黄色信号である。 実際は製造業のように設備投資の多い会社とそうでない会社とがあるので一概には言えないが一応の目安になる指標である。

ただ借入月商倍率が6倍をはるかに超えているような会社でも比較的スムーズに融資を受けることができる会社がある。 それは、債務償還年数が短い会社です。 債務償還年数とは(有利子負債―運転資金)÷営業キャッシュフローで求められる指標で、返済可能期間とも呼ばれ、金融機関が最も重視する指標の一つである。 この指標の適正水準は10年とされている。つまり10年以内ならおおよそ返済能力が良いと考えられる。
 実際この指標は会社の実力をよく表している。 実力のある会社は3年とか2年とか非常に短い年数が出る。 逆に財務内容の悪い会社は10年どころか20年以上のような会社もある。 ではこの数値が良くするためにはどうすれば良いか? それは高い収益性である。 つまり毎年多額の当期利益を計上できる会社です。 実際多額の利益計上できる会社はほとんどの経営指標が良くなっている。 極論すれば会社は利益を出してなんぼである。 いかに利益を出すかに精魂を傾けることが経営であり、経営者の究極の使命です。 利益がなければ、昇給も、設備投資もできない。 消費税増税後は当然景気も厳しくなると思われるが、外部環境がどう変わろうとも、毎年利益計上ができ昇給も設備投資もできる立派な会社になるよう頑張りましょう。

文理解釈

平成26年2月28日

確定申告の真っ只中で、一年で一番忙しい時期を迎えている。 そんな中、昨年12月に提出した相続税の申告書の件で、税務署から納税猶予制度が認められないという連絡を受け、その対応に追われた。 880万円もの増差税額が発生する話なので、内心あせったのだが、条文をじっくり読むと論理解釈上は税務署の言っていることも理解できたが、文理解釈上は問題ないと思われた。

そこで、税務署にその旨を伝えたところ税務署もあっさり間違った指摘であったことを認めた。 国税庁のHPにこの件に関して新たに質疑応答事例が掲載されていたのだが、どうも税務職員がそのことを理解していなかったようだった。

文理解釈ということで、思い出されたのが平成23年の武富士事件と呼ばれる1,330億円の贈与税の追徴課税を巡る税務訴訟事件である。 これは武富士の元会長が武富士株を所有するオランダの会社の株を長男に贈与したことが原因となっている。 明らかに相続税の租税回避を意図して行ったものであるが、最終的には最高裁で納税者が勝訴した。

そのとき有名な補足意見が述べられている。 それは 「・・・納税は国民に義務を課するものであることからして、この租税法律主義の下で課税要件は明確なものでなければならず、これを規定する条文は厳格な解釈が要求されるものである。 明確な根拠が認められないのに、安易に拡張解釈、類推解釈、権利濫用法理の適用などの特別の法解釈や特別の事実認定を行って、租税回避の否認をして課税することは許されない。」 というもので、租税回避を意図したものでさえ、課税判断は厳密な文理解釈によらなければならないというものである。 

文理解釈とは法文に書かれていることをその文字と法文に従って理解する解釈手法のことである。 文理解釈だけで全てを判断するのは危険だが、この最高裁判決は我々実務家が仕事をする上において大きな指針となった。

ただ租税回避行為が許されて金持ちだけがいい思いをするのかと思う人もあると思うが、現在はそれに対応した法律に改正されている。 また、ご存知のようにその後、武富士は多額の借金で破綻してしまっている。 また過去にはダイエーの創始者である中内氏が子供にダイエー株を租税回避スキームを利用して移転したのだが、ダイエー自体が事実上破綻してしまって、株式移転の意味がなくなってしまった。 やはり、過度な租税回避的な考え方はどこかでひずみを生じさせ、最後には良くない結果になっているようである。

事業承継税制

平成26年1月30日

早いもので今年も1月が終わろうとしていますが、今年は私にとって節目の年です。 年男であり還暦を迎える年です。 自分自身は若いつもりでしたが、還暦というのはやはり重みがありますね。

毎年この時期は税制改正の時期です。 26年度の税制改正法案は平成25年12月24日に閣議決定され、今国会で審議されています。 しかし新聞紙上では、はや来年に向けての法人税の税率引き下げを中心とした税制改正が話題となっています。

そんな時期、遅ればせながらではありますが、昨年に改正された事業承継税制について述べてみます。 というのも、この改正は平成27年1月1日以降に相続する非上場株式に適用されるからです。 この税制はもともと中小企業の後継者が相続等によりその会社の株式を相続した場合、一定要件を満たせばその株式に係る相続税の80%が納税猶予されるという制度で平成21年に鳴り物入りで導入されました。

しかし、適用要件が厳しく納税のリスクが高いことから利用状況は低迷しており、我々税理士の間では「使えない税制」とのレッテルを貼られていました。 せっかく作った税制が廃止の危機にあり、昨年の改正で適用要件等の緩和が図られました。 改正点は色々あるのですが、まず一番大きな改正は以前は制度利用前に経済産業大臣の「事前確定」を受ける必要があったのが、事前確定を受けなくても制度利用が可能になった点です。 これは、我々の立場から見ると、相続が発生して対象となる株式がある場合は、必ず制度の利用を検討することが必須となったということです。

さらに、後継者は現経営者の親族に限定されていたのが、親族に限らず適任者を後継者にすることができるようになりました。
 また、大きな障害になっていた雇用の8割以上を「5年間毎年」維持しなければならなかったのが、雇用の8割以上を「5年間平均」で評価し、さらに8割要件を欠いた場合、以前は全額納付であったのが、その下回った割合に応じた税額を納付すればよいという改正がなされました。

他にも納税猶予の打ち切りリスクの緩和、役員退任要件の緩和、債務控除方式の変更により債務の相続があっても株式の納税猶予をフル活用できる改正等がなされています。 それでもリスクはありますが、制度利用を検討する価値は十分ある改正内容となっています。 当事務所においても、事前対策も含め制度の積極的活用を図りたいと思っています。