HOME  >>  トピック

トピック

配偶者控除

平成28年12月28日

今年も残すところ数日になってしまいました。 今年は申年で「騒ぐ年」になるという格言通り、ブレグジットやトランプ氏のアメリカ大統領の当選と、 まさかと言うことが色々と起った年でしたが、皆様はどんな年だったでしょうか?

先月にも触れましたが、配偶者控除の改正が話題になっているので今回詳しく説明します。 少し複雑になっているので気を付けてください。 配偶者控除に居住者(夫婦の相手方)の所得要件が下記のように付されました。 居住者の合計所得金額が1,000万円を超えると配偶者に関する控除は一切受けられなくなります。

居住者の合計所得金額 配偶者控除額
900万円以下
900万円超950万円以下
950万円超1000万円以下
38万円
26万円
13万円

なお合計所得金額(給与所得控除後)なので、 収入金額では900万円は1,120万円、950万円で1,170万円、1,000万円では1,220万円になりますので注意してください。 配偶者控除は現行通り収入金額103万円以下の方が対象となり、 配偶者特別控除を年収150万以下の方にも38万円全額控除ができるように拡大した下記のような改正案となっています。

合計所得金が900万以下の居住者
配偶者の合計所得金額 配偶者特別控除額
38万円超85万円以下
85万円超90万円以下
90万円超95万円以下
95万円超100万円以下
100万円超105万円以下
105万円超110万円以下
110万円超120万円以下
120万円超1230万以下
38万円
36万円
31万円
26万円
21万円
11万円
6万円
3万円

これも収入金額ベースでは38万円は103万円、85万円は150万円のようになります。 居住者の合計所得金額が900万円超950万円以下の方は26万円から、950万円超1000万円以下の方は13万円から8段階にわたり逓減されます。 これは平成30年分から適用されますが、なんとも中途半端な改正だと言わざるを得ません。 これに社会保険の壁、配偶者手当等の壁があり、この改正で女性の社会進出がはかれるとは到底思えませんがどうなりますでしょうか?

今年も皆様には大変お世話になりました。どうぞ良いお年をお迎えください。

イラスト

中小企業のビジネスモデル

平成28年11月30日

政府・与党の2017年度の税制改正に向けた調整が大詰めを迎えている。 政府税調で検討されていた所得税の抜本改革は見送られるようだ。 配偶者控除は迷走の末、年収要件を103万円から150万円に引き上げ、高所得者には適用制限をする案で落ち着きそうである。 残念ながら私が危惧した通りになった。政治力学に左右されたようです。

そんな中11月17日に、以前ご案内したミロク会計人会統一研修会が開催され、多数のご参加をいただき盛会に終えることができました。 お忙しい中ご参加いただいきありがとうございました。 基調講演のカルフォルニア大学の中村修二教授、第二分科会の徳武産業(株)の十河孝男会長、第三分科会の子規記念博物館の竹田美喜館長、 それぞれが素晴らしい講演だったと多くの方から電話、メール、葉書等をいただきました。 参加された皆様の知見を深めていただく一助にはなれたのではないかと開催者の一員として安堵しています。

経営者の方は第二分科会の十河氏の講演を聞かれた方が多かったようです。 高齢者施設の経営者から転ばないシューズを開発してほしいという依頼を受け、 試行錯誤の結果つま先を2cmあげることにより、転ばないことを発見し製品化したとのことです。 その他にも足のはれやむくみにより両足別々のサイズの靴を通常価格で提供したり、片足のみの半額販売を業界で初めて行ったりされています。 さらには物を売るのではなく心を売るということを大事にし、心を込めて書いたはがきを商品に同封したり、 2年間お誕生日プレゼントを送ったりして、心を届ける工夫をされ、消費者の圧倒的支持を得ています。

この徳武産業の取り組みは中小企業の経営に大きなヒントになります。 日本はアベノミクスが限界にきています。金融政策や財政政策で何とかデフレ悪化は食い止めたが、成長戦略は機能していません。 それは日本にはモノがあふれており絶対的な実需が不足しているからです。 この状況下では多くの中小企業は価格競争に巻き込まれ、厳しい経営になってしまっています。

それを脱皮するために、徳武産業は次の取り組みを行ったのです。 ①中小企業が勝てる分野はニッチしかないと思い、さらにニッチの分野でもその市場が成長する分野であることを見極めて介護シューズ事業に参入した。 ②つま先を2cmあげた転ばない靴の開発は一種のイノベーションである。 ③モノを売るのではなく、心を付加して販売している。素晴らしい経営です。 まさに中小企業が生き残るためのビジネスモデルだと思います。是非参考にしていただきたいです。

イラスト

所得税の抜本改革

平成28年10月31日

10月26日に国勢調査の結果が公表された。 日本の総人口は、2015年10月1日現在1億2709万4745人で前回調査(2010年)から約96万人減少したとのことである。 調査開始以来、初めて減少に転じ、かつ75歳以上の人口は1,612万人と総人口の8人に1人を占め、これも初めて14歳以下の子供を上回ったとのこと。

愛媛県も松山市を含むすべての市町村で減少し、138万5,262人(46,231人減)になったようである。いよいよ本格的な人口減少時代の到来です。

そんな中、10月25日に政府税制調査会が開かれた。以前は女性の就業促進等の視点から、配偶者控除の見直しが盛んに議論されていた。 しかし、これは社会保険等の他の分野の政策と足並みを揃えて進められる中で、取り組みを行うべきとして、中長期的な観点から税制の在り方を考え、 給与所得控除等の改革を視野に入れて議論すべきだと所得税の抜本改革に舵を切ったようである。なお現在の給与所得控除は以下のようになっている。

給与等の収入金額 給与所得控除額
180万以下 収入金額×40%(65万未満は65万)
180万超360万以下 収入金額×30%+18万
360万超660万以下 収入金額×20%+54万
660万超1,000万以下 収入金額×10%+120万
1,000万超1,200万以下 収入金額×5%+170万
1,200万超 230万(上限)

以前から指摘されていたが、日本の給与所得控除は、世界的に見ても高い水準になっている。 その結果、伝統的自営業者や、最近増加してきた建築技術者、SE、保険代理人等の労働者に近い「雇用的自営者」との不公平感がある。 そこで、政府税調は働き方に影響しない「中立的な税制」の実現のためにも給与所得控除を引き下げ、 全員に認められている所得控除の基礎控除を大きく引き上げる方向で一致したようである。 同時に、年金受給者に恩恵が厚すぎるという指摘がある公的年金控除も縮小し世代間の不公平性を解消する考えである。 なお配偶者控除は廃止せず、年収要件を103万から引き上げる案を軸に検討されるようである。

この改正が行われれば所得税の大改正である。しかし日本の場合は大多数が給与所得者であり、この改正はなかなか容易ではないと思う。 税制改正は国会で成立するため、政治力学により左右される側面が強い。だが税制は国家の基礎である。 大山鳴動して鼠一匹にならぬようベストの改正を行ってもらいたい。

イラスト

働き方改革

平成28年9月30日

先日、安倍総理が臨時国会の所信表明演説で長時間労働の是正、同一労働同一賃金の実現をすると表明された。 「働き方改革実現会議」が組織され、外国人労働者の受け入れや長時間労働の是正等を検討していくようである。 子育て、介護など多様なライフスタイルと仕事を両立させるためには長時間労働の慣行を断ち切ることが必要だと演説された。

「長時間時間労働は悪しき慣行」だという考え方であるが、果たしてそうだろうか?  日本が先進国として成長してきた原動力は、なんといっても日本人の勤勉性に依るところが大きいと思う。 「一律に労働時間を短縮してはたして日本がもつのだろうか?資源もなく、国土も狭い日本が世界に伍していけるのだろうか? 安倍総理は演説の中で世界一になると何度も言われたが、そんなに簡単に世界一になれるのだろうか?」と私は違和感や不安を覚えてしまう。

仏政府は今春、企業の業績が悪化した場合に従業員を解雇しやすくしたり、労使で合意すれば週35時間労働制を46時間に延長する法案をまとめた。 ドイツは国の給付による手厚い保護を改め、労働者の就労意欲を高める改革を進めて、自立した働き手を増やしてきた。 このような諸外国の政策を知るにつけ本当に長時間労働の廃止や同一労働同一賃金だけを目標にしていいものだろうか?目の前の軋轢を避ける優しさだけでは国力は必ず低下してしまうと思う。

そもそも働くということはどういうことなのであろうか? キリスト教では労働は罰であるという「労働懲罰説」の考え方であり、西洋では「まず余暇ありき」でそのための労働であるという考え方が多いようだ。 それに対して仏教では、労働と言うのは修行であり美徳であるとされており、働くことの意義を人々に解いている。

京セラの稲盛和夫氏も「働くことは万病に効く薬であらゆる試練を克服し、人生を好転させていくことができる、妙薬だ」と言われている。 「今の自分の仕事に、もっと前向きに、できれば無我夢中になるまで打ち込んでみてください。 そうすれば必ず、苦難や挫折を克服することができるばかりか、想像もしなかったような、新しい未来が開けるはずです」とも言われています。 当然、休みも取れないような労働環境は問題だが、たった一度の人生を、 「余暇を楽しむために仕事をするのか、仕事そのものに意義をみとめ仕事に打ち込むのか」等、色々な考え方があると思う。 今回の働き方改革は、仕事について改めてその意義や目的について考えてみる良い機会だと思う。

イラスト

ミロク会計人会全国統一研修会

平成28年8月31日

連日、記録的な猛暑が続いていましたが、ここ数日やっと涼しくなり一息つくことができました。 そんな中、ミロク会計人会の全国統一研修会の準備に追われています。 ミロク会計人会とは、全国8,000事務所の(株)ミロク情報サービスのシステムを利用している税理士・公認会計士で組織された職業会計人の任意団体です。 当該会が統一研修会を毎年全国11の単位会が持ち回りで開催しています。 今年は四国会が担当会で、11月17日(木)松山全日空ホテルで開催されます。

基調講演はカルフォルニア大学サンタバーバラ校教授であり、高輝度青色発光ダイオードの発明、 開発でノーベル賞を受賞された中村修二氏を招いて『青色発光ダイオードの発明を振り返って』という演題で講演してもらいます。 いかにして発明に至ったか等、興味深い話が聞けることと思います。 彼はご存じのように愛媛県出身です。 郷里に対する強い思いがあり、忙しい中わざわざアメリカから帰省してくれます。

講演の後は分科会があります。 第二分科会は高齢者向けケアシューズ(あゆみシューズ)の製造販売で成長を続ける香川県の徳武産業(株)の十河孝男氏に、 『感動のオンリーワン企業を目指して』という演題で講演していただきます。 十河氏は高齢者施設の経営者から転ばないシューズを開発してほしいという依頼を受け、 何百人という高齢者の方々と面談し、試行錯誤の結果、つま先を2cmあげることにより、転ばないことを発見されました。 そのシューズを製造販売し、今では高齢者向けシューズでは全国トップシェアのメーカーになっています。 さらに購入された方々に季節の便りを送ったり、誕生日プレゼントをしたりして、 購入者との心の交流を図り感動を与える経営を実践されています。 「日本で一番大切にしたい会社大賞」の特別賞も受賞され、ガイヤの夜明け等の番組にも出演されています。

第三分科会子規記念博物館の館長の竹田美喜氏に、 『子規と漱石in松山〜新しい文学の夜明け〜』という演題で講演していただきます。 子規と漱石は互いを評価し、まさに畏友の交わりをしていました。 大喀血をして療養中の子規を、漱石は赴任先である松山の愚陀仏庵に招いて、50日余り同居したようです。 実はその同居が日本の近代文学の夜明けにつながったという話を、子規の俳句を交えながら、話される予定です。 子規の壮絶な生き様も詳細に話されます。

この統一研修会は一般の方もお聞きになれます。申込用紙を同封しております。 先着順になっておりますので興味のある方は早めに申し込みをお願いいたします。 詳細は当事務所にお尋ねください。

イラスト

贈与税の非課税枠

平成28年7月31日

今年も日本税務研究センターの軽井沢研修に参加してきた。なかなか刺激的な三日間であった。 中でも政府税調の中里実会長の講演で、 近年グーグルやアマゾン等が行っているとされる税源浸食または利益移転を図る国際的税務プランニングに対するプロジェクト、 いわゆるBEPSプロジェクトの話は興味深かった。とんでもないことが堂々と行われているようである。 詳しくは次の機会に述べたいと思う。

今回の研修で気になった点の一つに贈与税がある。政府は景気刺激策の一環として贈与税の非課税枠を次々と策定してきたが、 金持ち優遇税制ではないかとの批判があり、与党の税制改正大綱には『格差の固定化につながらないよう機会の平等や世代間・世代内の公平の実現、 簡素な制度の構築といった考え方のもと、不断の見直しを行わなければならない』と書かれている。 近い将来贈与税の非課税枠の見直しが行われるのは必至である。贈与は相続税対策では最も有効な手段の一つである。 そこで非課税枠等を改めて整理してみた。
(1)贈与税の基礎控除
一年間に贈与を受けた財産のうち基礎控除額110万までは贈与税は課税されない。
(2)住宅取得等の贈与税の非課税
贈与を受けた年の1月1日に20歳以上の子または孫が直系尊属から住宅を取得するために受けた贈与は、 平成28年1月1日から平成29年9月30日までの新築等に係る契約については省エネ住宅等1,200万、一般住宅700万までが非課税となる。 平成31年6月30までは、非課税枠は小さくなるが存続する。
(3)教育資金の一括贈与時の非課税
個人が直系尊属から教育資金の贈与を受けた場合は1,500万まで非課税となる。 ただし30歳時に資金が口座に残った場合は、残額に対して贈与税が課税される。
(4)結婚・子育て資金の一括贈与時の非課税
20歳以上50歳未満の個人が、結婚・子育て資金のために直系尊属から受けた贈与は1,000万まで贈与税が非課税となる。 ただし50歳時に資金が口座に残った場合は、残額に贈与税が課税される。また贈与者が死亡すれば、残額は相続財産に算入される。
(5)贈与税の配偶者控除
婚姻期間が20年以上の配偶者からの居住用不動産またはその購入資金の贈与は2,000万まで非課税とされる。

そのほか相続時精算課税制度があるが、使い方を誤ると税負担が重くなるので注意が必 要である。また上記の項目についても、細かい規定や、予想外の課税がされることがありますので、適用にあたっては必ず事前にご相談ください。

イラスト

Brexit(英国EU離脱)

平成28年6月30日

6月24日に英国のEU離脱が国民投票の結果決まった。 まさかの結果である。世界中に激震が走り、世界同時株安が起こり、たった一日で約330兆円もの時価総額が消失した。 英国は当然のこと、EU諸国も、日本も含めた世界中の先行きが一気に不透明になってしまった。 特に英国では、離脱後のシナリオは描けておらず、今後Brexit(ブレグジット)がどういう影響を及ぼすのか、 誰が国を運営するのかが全く見通せず不安と混迷が深まっている。 今回の結果は、英国だけではなく世界中をまさに海図なき航海に導いてしまった。

そもそも今回の国民投票を行う意味があったのかと思う。 キャメロン首相はどうも、今回の国民投票を政治基盤の強化を目的に実行したのではないかと思う。 彼もまさか離脱に決定するとは思いもよらなかったはずである。EU離脱はまさに英国民の民意である。 それは国民投票という直接民主主義の結果であるので、有無を言わさぬ決定力がある。 私は、やる必要のない、やってはいけない投票だったのではないかと思う。 ともあれキャメロン首相はBrexitを招いてしまった指導者として歴史にその名を残すことになった。

さて日本への影響だがこれも同じように不透明であるが、一番心配なのは為替である。 90円台、80円台の円高になれば日本企業は大打撃を受け、日本全体の景気を冷え込ませてしまいかねない。 こうなると一企業の努力だけではどうしようもない。

今回のBrexitのように、世界中がますます不透明な時代になっていくと思われる。 何が起こっても不思議ではない。だからこそ、どんな時代が来ようとも、持ちこたえるだけの自己資本(内部留保)が必要である。 そのためには普段から顧客獲得や絶え間ない改善を重ね、高い利益(税前利益10%以上)を目指さなければならない。 そして税引後利益を営々と蓄積して厚い内部留保を実現し、 どんな事態にも耐え得る安定性と信頼性のある会社にならなければならない。 そうなれば一番大切な従業員の雇用の確保ができる。努力によって世界は変えられなくとも、自社を変えることはできます。

しかし英国だけではなく、世界中が寛容さをなくしナショナリズムに向かっていることが気がかりである。 共同体はメリットだけではなくデメリットもあることは当然である。 メリットだけを享受することができないのは自明の理である。 今こそ、世界が、忍耐や寛容さをもったグローバリズムを目指さなければならない時だと思う。

イラスト

スマホでマイナンバー

平成28年5月31日

日本で開催された伊勢志摩サミット(G7)が、世界経済の減速阻止策等を柱とした首脳宣言を採択して5月27日に閉幕した。 その足で、オバマ大統領は、現職の米国大統領としては初めて被爆地広島に訪れ献花し、被爆者とも対面した。 米国国内では原爆投下に関して様々な意見があるようだが、原爆投下は大量殺戮を意図したもので、まさに愚行であり、 人類の汚点であることには間違いない。大量殺戮兵器など無いほうがいいに決まっている。 簡単ではないのは分かっているが、人類が信じあえる平和な世界が早く訪れてほしいと思う。

同時に安倍総理が来年4月の消費税の増税を再延長することを決めたという報道がなされている。 どうせなら軽減税率の実施も再検討してほしいものである。

さてそんな中、今年から実施されているマイナンバーについて気になる記事が日経新聞に載っていた。 携帯電話会社と連携して、スマートフォンを使った本人確認システムを作るというものである。 日常持ち歩くスマホにマイナンバーカードの情報をダウンロードし、読み取り機にかざすと本人かどうかを特定できるようにし、 クレジット決済や病院での健康保険などの本人確認で活用するとのことである。平成30年度に関連法を改正し、 翌31年度からの実用化を目指す予定である。

もともとマイナンバーカードは公的な身分証明書である。 今年から税、社会保障、災害時に限られ使用されているが、当初から税務署や年金事務所に限らず、 市役所、図書館、病院等にも利用範囲を広げることは予定されていた。

今回の報道によれば、そのカードの個人認証機能の利用を、民間企業にも開放し、 買い物等のクレジット決済等の利用拡大を想定しているようである。 そうなれば、複数のクレジットカードの認証機能をマイナンバーカードに集約し、スマホでダウンロードすれば、 読み取り機を導入している店でクレジット決済を使える。何枚ものカードを持ち歩く必要もなくなることになる。

セキュリティーの問題は、マイナンバーを暗号化して情報をやり取りすることで外部への流出を防ぐとのことである。 なおスマホ紛失時にはスマホ通信を止めればカード会社への停止連絡は不要になる。 利便性を高めてマイナンバー制度の定着をという政府の戦略だが、 将来はマイナンバーカードがライフスタイルそのものを変えているかもしれない。

イラスト

壺神神社

平成28年4月30日

私の生まれ育った大洲市柳沢に、地域で一番高い山である壺神山(標高971m)があり、 その山頂近くには、大国主命と少彦名命の二神を祭った壺神神社があります。 その神社で毎年4月28日に『春の大祭』が行われるのですが、成り行きで、そのお世話役をさせていただいています。 当日は県の無形文化財に指定されている藤縄神楽の奉納や、甘酒のサービス、最後には餅まきも行うので、神社の清掃、餅まき用の餅つき等々その準備はなかなか大変です。

大洲市柳沢地区は、年々加速度的に過疎化が進み現在は253世帯、人口544人、高齢化率50.7%の地区で存続さえ危ぶまれている地域です。 そんな中でも同級生や同世代の方々が中心となって、懸命にそれも明るく、地域を支えている様子を見るにつけ本当に立派だと感心させられます。 そういう方々の献身的な協力のもと、何とかこの『春の大祭』が30年以上続けられています。

当日は生憎の雨模様の中、同級生も数人わざわざ松山から、それも仕事を休んで参拝に駆けつけてくれ本当にありがたかった。 また、同級生でもある地元の県会議員も神事から参加してもらい、挨拶をしてもらった。 その内容は「こういう行事が地域の結束を生み地域の活力の源になるということ、さらには熊本地震で亡くなられた方々の冥福と、 一日も早い復興、さらにはこのような震災が二度と起きませんようにとお祈りをしました」という趣旨の挨拶でした。

人間は、ついつい自分のことや家族のことを中心に祈りがちですが、彼は政治家らしく地域や日本のことを考えて祈ったと言いました。 彼の話を聞いて、今更恥ずかしいことですが「祈りとは個人の願いではなく、 地域全体ひいては世界中の平安を願うことが本質なのだと気付かされました」もともと神社や仏閣は地域の平安の祈りの対象として建立されたものです。 改めてその意義がわかった気がいたしました。

もともと壺神神社は、少彦名命があまりの素晴らしい眺望に気を取られて置き忘れたと言われている薬壺が御神体です。 壺神神社からは、大洲盆地はもちろんのこと、天候に恵まれれば、伊予灘、佐田岬半島、松山に至るまで一望できます。また、標高が高いので、 5月にはシャクナゲを中心に水仙、八重桜等々の花々が咲いており色々な花を観賞できます。 特にシャクナゲは神社正面に多数植えられておりなかなか見ごたえがあります。神社まで舗装道路が通じており車で参拝できます。 かなり山道をあがりますが、足を伸ばしていただけたら幸いです。

税制改正

平成28年3月31日

3月29日に平成28年度の税制改正関連法案が参議院本会議で可決成立しました。 今回の税制改正の目玉は、なんと言っても消費税率を10%に引き上げることと、同時に導入される「軽減税率」です。 対象品目は「酒類」と「外食」を除いた飲食料品のほか、定期購読契約の週2回以上発行される新聞です。

 また、課税事業者のみが発行できる仕入れ税額控除の対象となる税率や税額を記載した請求書いわゆる「インボイス」を平成33年から導入することになりました。 以前(27年9月)にも述べたのですが、軽減税率のために、日本独自の帳簿方式からインボイスに移行せざるを得ないので大変な費用と労力を事業者に負担させることになりました。 ただ個人消費を中心にした国内景気のふらつきが、消費増税時期の判断を難しくしています。 しかし、たった2%の増税ができないとなると財政規律や、外国からの評価も気になるところであり、安倍総理も決断のしどころだと思います。

そのほかにも多数の改正が行われましたので、その中で目につく改正をいくつか取り上げてみました。
・法人税が平成28年4月1日以後開始する事業年度から23.4%に、さらに平成30年4月1日以後開始事業年度からは23.2%に引き下げられ結果として地方税を合わせた実効税率は28年度29.97%、30年度は29.74%になり念願の20%台になりました。
・平成28年4月1日以後に取得する建物附属設備、構築物の減価償却は定率法が廃止され、建物同様定額法に一本化されました。
・雇用促進税が一部手直しの上2年間(平成30年3月31日以前開始事業年度)延長されました。同意雇用開発促進地域の事業所(愛媛県では松山と宇和島の職安地域)の無期かつフルタイムの増加雇用者数×40万円が税額控除できます。
・相続時から3年を経過する日の属する年の12月31日までに、被相続人の居住用家屋を相続した相続人が、その家屋(昭和56年5月31日以前建築で耐震性のないものは耐震リフォーム後のものに限り、敷地を含む)または除却後の土地を譲渡した場合は、譲渡益から3,000万円を控除することができます。
・そのほか住宅の三世代同居改修工事等に係る特例の創設、セルフメディケーション推進のための医療費控除の特例措置、通勤手当の非課税限度額の引き上げ、贈与税の配偶者控除の添付書類の見直し等々多数の改正項目があります。 特例の適用要件もあります。詳しくは、当事務所担当者から適宜ご説明させる予定ですので、よろしくお願いいたします。

風の音を聞いて悟る

平成28年2月29日

 今年も確定申告の時期を迎え、日々確定申告書の作成に追われ、法人の皆様にはご迷惑をおかけしております。 この超繁忙期ではあるが、盛和塾(京セラ名誉会長稲盛氏主催の経営塾)の世界大会中四国ブロック選考会が先日松山で開催されたので、無理を押して参加した。

 中四国ブロック選考会とは、経営者の体験発表をする世界大会の中国四国地域の代表を選ぶ選考会である。 当日は6名の発表者があったのだが、皆さん素晴らしい発表で感動の連続だった。

 社長就任直後に赤字に陥り、不安で夜も眠れない中、稲盛氏の「誰にも負けない努力」の言葉に出会い、「誰にも負けない努力をしてだめだったら仕方ない」と腹をくくることができ、それからは必死に仕事に打ち込み眠れるようになった。 とか、仕事に対する誇りが持てないなか、「今の仕事をこれは神が与えた天職だと思い今の仕事を好きにならなければならない」との言葉に出会い救われた。 とか、皆さん稲盛氏の言葉に勇気と気づきをもらい、業績を伸ばしていったとの発表が多かった。皆さんがど真剣に経営に打ち込んでいる様が心に伝わってきた。

 気づきと言えば、松下幸之助の側近だった江口克彦の『ひとことの力』という著書の中に、「風の音を聞いて悟る」という項目があった。 それは幸之助氏の側で仕事をするようになって一年ほどたったある日、「きみな、風の音を聞いても悟る人がおるわなー」とぽつりと言われた。 その時は何のことかわからなかったが、数日間、何のことだろうと考えていたら、この言葉が自分を叱責している言葉だと気付いた。 というのは江口氏は緊張のあまり幸之助氏の話に相槌を打って聞くだけで精いっぱいだった。 それに幸之助氏が不足を感じ、「問題意識、目的意識を持っていればたとえ何でもない杉木立を鳴らす風の音を聞くだけでも、あっ、そうかと悟ることができる。 君は私の話から何を学んでいるのだ」という自分への叱責であり、教えの言葉だったと気付き、その一瞬、体が凍る思いがした。 と書かれていた。幸之助氏らしい凄味のある言葉だと感心した。

 「世の中には原理原則、真理がありそれにいかに気づくか」によって人生が大きく変わっていくように思う。 怠惰に目的意識もなく生きていたのでは、魂を揺さぶるような出来事や言葉に出合っても、何事もなく過ぎ去ってしまうのだと思う。 この幸之助氏の言葉は「普段から目的意識を持ち、自分のエネルギーを高め、真摯に生きなければならない」ことを改めて教えてくれた。

タワーマンション節税

平成28年1月31日

 申年は「騒ぐ年」になるという格言があるようだが、まさに格言通りの波乱の幕開けになっている。 何十年かぶりの大寒波が襲来したり、なんといっても株式相場が連日大幅に下落し、昨年末の19,033円から約17,000円に下落してしまっている。 株式の下落要因は、中国に対する懸念、米国の利上げ、原油安、中東等の地政学リスク等々の理由が挙げられているが、ここにきて実体経済まで一気に不透明になってきた。

 そんな中でも、不透明だからこそなのかもしれないが、相続税の節税に関する記事等がよく目につく。 先日(1月24日)の日経新聞の一面にもタワーマンション節税の記事が掲載されていた。

 タワーマンション節税とは、相続税評価額と実勢価格とのかい離を利用した節税策の一つである。 このスキーム自体は珍しくないのだが、タワーマンションのかい離率は、国税庁の調査によると平均約3倍にもなるという。 1億円で購入したマンションが相続税評価額は3,000万円になるというものである。かい離率が高いので、平成27年1月の相続税増税をきっかけに節税目的でタワーマンションを購入する人が急増していたようである。 一人で5戸や10戸も節税目的で購入する富裕層もいるようである

 24日の日経新聞によれば、その節税策に歯止めをかけるため、国税庁と総務省がタワーマンションを買った人の税負担を大幅に増やす改正案を今秋にもまとめ、早ければ平成30年1月から実施する予定とのことである。 その内容は実勢価格に合わせて高層階に行くほど税負担が増加するよう総務省令を見直し、例えば高層階の20階は一階の10%増、30階は20%増とういうかたちで一定の補正率を導入し、眺望が良好な好条件の高層階ほど相続税負担が増加し、逆に低層階は評価額を下げて相続税負担を減少する改正案を予定しているとのことである。 節税目的でタワーマンションを購入した方は、平成29年までに死亡しなければその効果が半減してしまうという笑えない話になる。

 この種の節税策は、当局との「いたちごっこ」の様相を呈している。しかし節税目的のみで物事を判断するのは間違いである。 それは自分の欲で物事を判断してしまっているので、リスクが見えなくなり、今回のように後で思わぬマイナスが起こることは少なくないからである。 投資は本来リスクを伴うものである。特に多額の投資をする場合には、効果とリスクを検討して慎重に行わなければならないということである。