「仕送りに頼る出稼ぎ労働者」という日経新聞の記事が目に留まった。ブラジルやフィリピンなどから日本にいる出稼ぎ労働者への送金が増えているという内容だった。外国人労働者の海外の家族との送金業務を手掛けている会社によると、以前は大半が本国への送金だったが、2024年夏前から海外への送金と海外からの送金がほぼ同額となっているらしい。外国人労働者によると生活が苦しくなったのは「物価高」を挙げている。食費、光熱費、ガソリン代の高騰が生活を圧迫している。原因はそれだけではない。「残業時間短縮などの労働規制や、社会保険料の支払いが外国人労働者にも厳格に課せられ、手取りが増えにくい環境になった。そこに物価高が加わっている」とのこと。さらに円の価値も下落し、大幅な賃上げなしでは外国人が日本で働く魅力はさらに低下する。日本人の若年層の採用は難しくなり、外国人に頼らざるを得ない中小企業が危機感を強めているとの記事だった。

 

日本のGDPは長らく米国に次ぐ世界第2位の規模にあった。しかし、2010年頃に中国に抜かれ、直近ではドイツに逆転されて世界第4位まで下がっている。将来も下がり続け50年後には10位圏外になるとの試算がある。先進六か国の2010年以降の実質GDP成長率を比較すると、米国が2.3%、イタリアが1.5%、ドイツが1.4%、英国が1.3%、フランスが1.1%、最後に大きく引き離されて日本が0.6%になっている。日本経済はなぜここまで低迷したのか?実質GDPは「総労働時間数×1時間当たりの実質労働生産性」で算出される。日本の1時間当たり労働生産性は2000年から2010年は1.1%の伸び、直近の2010年から2021年までは0.9%の伸びになっており、ドイツ1.1%、米国1.0%に次ぐ水準にある。日本経済の低迷の元凶が、言われているような労働生産性の低迷にあるわけではないことがわかる。一方総労働時間数はこの10年ほどで0.3%減と他国と大きく乖離している。この10年あまりで労働力が減少したのは日本のみである。労働投入量が減少しているのは、当然人口動態の影響がある。近年は女性や高齢者の労働参加が急速に進んでおり、過去と比べればこの10年間は労働力の減少が比較的押えられている。しかし、今後は就業率の上昇だけでは労働力の減少を補えないことは明白である。そこで外国人労働者の存在は日本にとって本当に重要である。早急な対策が必要である。今こそ政治家の出番である。

 

前述したように、経済発展のためには競争力のある付加価値の高い仕事をすることにより生産性を高めることも当然に求められるが、絶対的な総労働時間数が必要である。日本は最近「働き方改革」により働くことがのような風潮がある。これこそが国家衰退の元凶であると思っている。「働くこと」はあらゆる試練を克服し、人生を好転させる素晴らしい可能性を持っていると思う。日本は、働くことの根源的な意味にもう一度真正面から向き合うことが必要になっているのではないだろうか?