令和8年税制改正で課税最低限が給与年収ベースで178万円まで引き上げられ、扶養控除も給与収入ベースで136万円に大幅に引き上げられた。ただ社会保険の強制加入要件が130万以下なので、働き控えが起こる年収の壁は136万以下か130万以下になると思うと2月の原稿で書いた。しかし年収が多い人はあまり減税にならないと思った。
そんな時、5月8日の日経新聞に「進む隠れ増税2兆円」という記事が掲載された。物価高と賃上げが重なり「ステルス増税」が進んでいる。低インフレだったコロナ危機前と比べ、2025年の家計の税負担は年2兆円ほど増えた。政府が所得税の税率区分を柔軟に調整していないため税率区分が上がる問題が大きいという記事であった。
国税庁の民間給与実態統計調査を基に試算、2019年~2025年の物価上昇を累積11.9%とみると、日本は所得税の税率区分を据え置いているので、国民全体で0.98兆円の税金の負担増になっているようである。というのも日本の所得税はご存じのように超過累進税率になっている。だから給料が上がっても高い税率区分に移ると手取りが伸びない場合がある。25年までの間に820万人ほど税率区分が上がったようであるが、5%から10%に約412万人、10%から20%に約270万人が移ったとみられている。その結果、負担増になっている。(別紙参照)
さらに給与所得控除の未調整である。令和8年度改正で65万円から69万円へ引き上げさらに特例措置として5万円引き上げ最低74万の給与所得控除になったが、それより高い収入で一定額まで控除を増やす措置や上限額の調整は行っていない。その結果0.69兆円の実質増税になっているようである。もう一つ住民税の基礎控除は45万円のままである。それで0.25兆円の実質増税になっている。これらの3項目の合計で2025年時点の国民負担は年1.92兆円になっている。
令和8年の税制改正で中間層までの基礎控除を手厚く引き揚げ、所得税を7,000億円減税した。基礎控除の本則部分と給与所得控除の最低保証に関しては、消費者物価指数の伸びに沿って2年に一回のペースで上げることも決めたが、この3項目を放置していると、負担増が10年で1割増える試算もある。日本の債務残高は世界に類を見ない規模になっており、当然財政健全化も図らなければならないが、これまで日本を支えてきた分厚い中間層が崩れている。日本の将来を考えると、その中間層に減税の恩恵が必要である。私はそういう視点からの税制改正が必要だと思っている。