9月も終わろうとしているのに、毎日うんざりするような暑い日が続いている。今年は世界中が高温に見舞われているようである。地球の温暖化は確実に進行している。以前にも述べさせていただいたが、1人ひとりが地球環境を守る意識を持ち、ライフスタイルも変えていかなければならないと思う。

先日、日経新聞の地方版の記事が目に留まった。農業資材の販売会社がドローンを使い、「天空の隠れ里」と呼ばれる大洲市の樫谷棚田で農薬散布する実証を実施。同地域では水稲農家の高齢化が深刻で、作業負担を減らして棚田の維持がしやすい仕組みづくりを目指す。というものであった。故郷である大洲市にそんな棚田が残っているのかと気になり、調べてみたら、樫谷棚田は大洲市戒川という集落にあり、何と私の実家から峠を越えた反対側、壺神山の西側斜面標高500メートル付近に位置していた。

今時、手間のかかる棚田が何故残っているのだろうと疑問に思いさらに調べてみると、樫谷棚田も10数戸の耕作者により辛うじて維持されており、他の地域同様高齢化と後継者難の中で存続の危機に直面していたとのことである。そこで耕作者と域外の有志が「樫谷棚田保存会」を立ち上げ、棚田を守るため棚田オーナー制度を採用した。年会費3万円で100㎡のオーナーになり、田植え、稲刈りに参加すれば、玄米25kgと大洲産の新鮮な野菜、果物の贈呈を受けるという内容である。今では40人ほどのオーナーがおられ、棚田の保全に協力していただいているとのこと。

お彼岸に実家の墓参りに帰った折、樫谷棚田に立ち寄ってみた。御多分に漏れず細くて暗いつづら折りの山道を登っていくと、突然視界が開け、約200枚の棚田(3ha)が美しい曲線美を見せて、すり鉢状の奥行ある景観を作り出しており、まるで隠れ里のような空間が広がっていた。棚田は5、6枚を残し稲刈りが済んでいた。稲刈りがされていない棚田はオーナーの田で1週間後に稲刈り予定とのことであった。当日は谷から爽やかな秋風が吹いており、清涼感に包まれ憩いのひと時を過ごすことができた。

棚田は先人の知恵と工夫で築き上げられた産業遺産であり、農村の原風景である。その景観美は人の心を和ませてくれると同時に、洪水調整や生物の多様性を保持する機能を持っている。地球の温暖化対策の一助にもなっている。耕作者の方は「いつまでできるかわからないが頑張って保存していきたい」と言われていた。私も何らかの形で保存に協力したいと思う。なお、ドローンによる棚田の農薬散布は自動では難しく、うまくいかなかったようである。