先日中学校の同窓会に参加してきた。地元の同級生が古希の祝いを兼ねて開催してくれた。還暦の時も同窓会を開催したのだが、つい最近のような気がし、まさに「光陰矢の如し」である。ただ同級生とも近況を語り合い楽しい時間を過ごすことができ、開催してくれた地元の同級生たちに感謝である。
故郷の祝い事には地元の藤縄神楽(愛媛県無形文化財)の奉納が慣習化されており、今回も奉納された。藤縄神楽は大洲市の神社等を中心に30カ所以上で奉納されている。久しぶりなので神楽のメンバーに近況を尋ねたところ、コロナで奉納回数が減っていたのだが、ここのところ忙しいとのことなので、理由を尋ねると、大洲城の宿泊客の前で上演しているとのこと。回数が一年半で20回ほどになっているらしい。大洲市には他にも同じく県の無形文化財に指定されている山鳥坂鎮縄(しめ)神楽という神楽もあり、交互に宿泊客の前で上演していることなので、大洲城の宿泊数は40回以上にのぼる勘定になる。大洲城での宿泊は、基本料金が一泊一人55万円、利用は2人以上からなので、最低でも110万円からの宿泊となる。価格だけを見るとそんなに宿泊客がいるのかと驚きである。
宿泊の内容はまず、松山空港までスタッフが送迎に向かい、大洲到着後に男性なら“殿”として甲冑を、女性なら“姫”として着物を身に着け、城への入場セレモニーを行う。大洲藩初代藩主の加藤貞泰が、米子藩から大洲藩に移った際の史実をもとにして、移動のための馬や鉄砲隊の祝砲や法螺貝の合図、10人~20人にもなる家臣の出迎えなどを演出する。家臣による城内案内の後、隣接している重要文化財である高欄櫓で、神楽鑑賞、地域の最高食材を用い、お殿様が召し上がったであろう色とりどりの料理を再現した夕食「お殿様御膳」を地酒とともに提供する。ライトアップしたお城を眺めながら入浴し、ラウンジでお酒を提供、その後、天守にて就寝する。翌朝はこれも重要文化財である臥龍山荘にて食事、御呈茶を提供。街歩きや街での体験を楽しんだ後、松山空港まで送り届ける。これらを基本体験として、オプションも含めてオーダーメイドで旅程を組み立てる内容である。総じて満足度は高く、宿泊者の方は、口をそろえて「100万は安い」と言われるそうである。
「経営の神様」と称される稲盛和夫氏が、中国出張の際に露店で売られている一袋20円の焼き栗を「もっと安くならないか」とさんざん値切り倒し、結局は買わなかったという有名なエピソードがある。稲盛氏はケチで買わなかったのではなく、内容が20円にも至ってないので買わなかったのである。100万円でも安い、20円でも高い、物の値段は金額の多寡ではなく、その内容にリーズナブル感があるか否かで決まるのである。