このところのニュースはロシアのウクライナ侵攻や、新型コロナウィルスの感染者数が中心になってしまっているなか、4月19日に注目されていた税法裁判の最高裁判決が下された。相続マンションの財産評価通達6項に基づく鑑定評価額を採用するか否かなどが争われた事件について、原審同様に国側の鑑定評価額を認め、納税者の上告を棄却した。3月に最高裁で弁論が開かれたため納税者の逆転勝訴があるのではと、傍聴席19席を求めて85人が並ぶほど注目されていた。判決文を読むと、高裁の相続税法22条(評価の原則)の論旨に問題があるということで、弁論が開かれたようである。

事案の概要

札幌在住の被相続人が信託銀行等から10億5,500万円を借り入れ、合計13億8,700万円の2棟の首都圏マンションを購入、被相続人死亡後、本件各不動産を路線価に基づき3億3,370万円で評価し、さらに銀行借入金等の債務控除を適用し、相続税額は0円として申告したが、国税当局は当該相続財産を総則6項に基づき約12億7,300万円と再評価し相続税の総額約2億4,000万円とする賦課決定処分をしたことにより争いとなった。

最高裁は路線価に基づく評価と実勢価格に大きな差があるだけでは「相続税法に反しているとは言えない」としながらも、「評価通達の定める方法による画一的な評価を行うことが本件各不動産の購入と銀行借り入れのような行為をせず又はすることができない他の納税者と上告人らとの間に看過し難い不均衡を生じさせ、実質的な租税負担の公平に反するというべきであるから、合理的理由があると認められる」と本件各不動産の価額を本件各鑑定評価額に基づき評価したことは、適法であると判示した。

総則6項は「この通達の定めによって評価することが著しく不適当と認められる財産の価額は、国税庁長官の指示を受けて評価する」というもので、課税庁のいわゆる「伝家の宝刀」である。「税負担の公平に反するべき事情がある場合」は例外規定の追認をした形で、実質的適用に「お墨付き」を与えたようで今後の運用が気になるところである。しかし、通達評価額と鑑定評価額が大きく乖離しているだけでは足りず、そこに介在する被相続人の節税意図やその行為を必要としていることは注目すべき点である。また、本判決では、総則6項の明確な適用基準が示されることが期待されたが、特段の基準と言えるまでの言及はされなかった。そういう意味でもあいまいな部分が残った点は否めないと思う。

納税者の節税を求める行為は経済合理性から考えると、当然な行為であり節税行為全てが許されないわけではない。しかし、今回のような行き過ぎた節税はいわゆる租税回避行為とみなされ否認されるリスクが高いと言わざるを得ない。