先月、コロナウィルスの新規感染者数が1万人を超えたと書いたが、ここ最近は、連日2万人超の新規感染者が出ている。一体いつ落ち着くのか解らない状況である。
このようなコロナ禍の中、アフガニスタンでは8月15日にタリバンが首都カブールに侵攻し、事実上アフガンを制圧した。米国が2001年の米国テロをきっかけに、いったんは打倒したタリバンの復権は「テロとの戦い」が振り出しに戻ることを意味し、この20年に及ぶアフガン紛争の意味が問われている。20年かけても民主主義の豊かさをもたらせなかったことが敗因だと言われている。米国が貧困や経済発展に対応しなかった不作為が、タリバン復権を招いてしまった。
1989年に米ソ冷戦が終結した。当時の東欧諸国の市民には、少なくとも民主主義や資本主義が輝いて映っていたはずである。民主主義が共産主義に打ち勝ち、世界全体に広がると思われていたが、ここにきて世界の民主化への流れは逆回転を始めている。2010年代前半に中東地域で広がった「アラブの春」の民主化運動も多くの国で頓挫し、米国が進攻したイラクも豊かさを享受できていない。EU内でも、東欧諸国はドイツやフランスとの経済格差が埋まらないことで、ポピュリズムが台頭している。
現在、民主主義や市場経済に移行し、その豊かさを享受している国といえばドイツと日本である。それと、民主主義とは言えないが、中国とベトナムも市場経済を導入して大きく発展した。中国に至っては今や世界第二位の経済大国である。私は「社会主義市場経済」が発展し続けるとは思わないが、中国首脳は「社会主義市場経済」の優位性を盛んに強調しているようである。
何故、豊かさを享受できる国と豊かになれない国とがあるのであろうか?東欧諸国や中国やベトナムの事例から考えても、民主主義社会になれば、すべての国が豊かになれるのではないようである。では何か?それは教育と勤勉性ではないかと思う。教育は国家を形成するためには不可欠の要素であるが、豊かになるためには勤勉性が大きな要素を占める。ドイツ、中国、ベトナム、そして日本に共通することである。(中国は少し異質であると思うが)そして日本は、戦争により焦土と化した中から、奇跡の復興を成し遂げた。ただ最近、その原動力になった日本人の特性が失われているようで気がかりである。戦後日本の復興を指導した吉田茂元首相は、「日本には地下資源がないと言ったが、実は一つだけある。それは勤勉だ。この唯一の地下資源を失ったら、日本はみじめなことになる」と言われたとのこと。残念ながら、この予言はかなり当たってしまったようである。日本人はもう一度、力を合わせて働き、唯一の地下資源である勤勉を取り戻すべき時だろうと思う。