猛威を振るった新型コロナウィルスも、ここのところやっと落ち着きの兆しが見えてきた。私自身も6月20日に二回目のワクチン接種を受け、副反応もなく終えることができた。ただ、これからオリンピックによる人流増加に伴い、感染者数の再上昇が強く懸念される。オリンピックを開催するのなら、徹底した感染リスクを制御し、是非、成功裏に終えてほしいものである。

今回のコロナ禍では、政策対応においても、スピードと柔軟性が強く求められるので、デジタル技術の活用が必須である。しかし、日本では10万円の給付金配布においてもマイナンバーが十分に機能しなかったことをはじめ、データの集計、共有からは程遠い現状を露呈し、DX(デジタルトランスフォーメーション)の取り組み以前のレベルにあることが判明してしまった。何故、日本はこうも世界から立ち遅れてしまったのだろうか?

そんな状況ではあるが、国税庁は本年10月より、金融機関と連携し、調査対象者に係る「預貯金等の照会・回答業務」のデジタル化を全国展開する予定である。「預貯金等の照会・回答業務」は、税務調査等の際に行政機関と金融機関との間で行われており、年間の照会件数は6,000万件にも及ぶという。このうち国税関係が600万件と最も多く、全体の1割を占めている状況とのことである。同業務は、すべて紙ベースの人手作業で行われているため、金融機関側、国税当局両方で、事務手続きに多くの時間を要している。

そこで、国税当局では、同業務の“デジタル化”に向け、昨年10月19日から2か月間、実証実験として金融機関4行と一部の国税局との間でオンライン照会・回答を実施、①デジタル化による業務効率化効果及び費用対効果、②デジタル化に対応した事務フローの環境テスト等を検証したとのこと。その結果、金融機関から4営業日以内に90%以上の回答が得られ、また、平均回答日数は書面照会の11.3日に比べ、オンライン照会では2.5日と大幅に短縮された。

この実証実験の結果、業務効率化の効果が期待されることから、本年10月より、全国でオンライン照会を導入する予定である。国税庁は、最終的にはマイナンバーによる不動産や預貯金等の金融資産の名寄せを実施する大きな目的を持っている。オンライン照会はその一歩ともいえる。現在のマイナンバーは、社会保障、税、災害以外にも、使用範囲を広げているがまだまだである。せっかく多額の予算を使って導入した制度なのだから、名寄せだけではなく、様々なサービスを一枚で受けられるよう早急に取り組むべきだと思う。