先月まで落ち着いていた新型コロナウイルスの感染者が急増している。全国で連日2,000人を超える新規感染者が確認され、愛媛でもこの半月で190人もの新規感染者が出ている。「第3波」の到来と言わざるを得ない状況である。

そんな状況下ではあるが、国税庁は感染拡大防止策を徹底したうえで、10月以降税務調査を少しづつ再開している。税務調査の結果、税務署長が行った処分に対して、納得がいかなければ、再調査請求、又は国税不服審判所に審査請求をすることができる。
国税不服審判所は、税務行政内部における公正な第三者機関として、税務行政の適正な運営の確保に資することを使命とし、審査請求人と税務署長等との間に立つ公正な立場で審査請求事件を調査・審理して裁決を行う機関である。そうはいっても以前は国税庁の機関としての色合いが強く、税務署よりの裁決が大半であった。しかし、最近は事件担当の国税審判官100名のうち50名は民間採用されており、納税者の主張を支持する裁決事例も多くなっている。裁決は、行政内部における最終判断となる。したがって、税務署長等は、裁決の内容を不服として訴訟を提起することはできない。税務署長の処分がどうしても納得できない場合は審査請求も選択肢の一つだと思う。その裁決にも納得いかなければ、裁判所に原処分取消訴訟等をするしかない。

ただ留意すべき点がある。国税庁課税部平成21年10月5日付全国国税局課税部長会議資料によると「調査事案への適切な対応」「異議事務」「訴訟事務」として次のような対応を指示している。
「調査事案への適切な対応」
納税者の主張に十分耳を傾けるとともに、常に、必要な証拠の収集・保全及び事実関係に即した的確な事実認定を行う。
「異議事務」→「再調査の請求」
異議申し立てについては、納税者の正当な権利利益の救済を図るとともに行政の適正な運営を確保するという不服申立制度の趣旨を踏まえ、公正な立場で充実した調査・審理を行う。
「訴訟事務」
税務訴訟は税務行政の適法性が公開の法廷で問われるものであり、個別事案としてマスコミの関心も高く、その結果は税務行政全体に大きく影響することから、的確な訴訟遂行により、勝訴判決を積み重ね税務行政に対する国民の信頼を確保していく必要がある。
訴訟事務になると姿勢が全然違うことに気づかれたと思う。訴訟事件は行政のメンツをかけて戦う姿勢を鮮明にしている。これから見ても税務調査は現場でできるだけ解決を図ることが必要と思われる。