7月29日に全国で確認された新型コロナウィルス新規感染者数は1,264人に上り初めて1,000人超となった。これまで感染者がゼロだった岩手県でも2名の感染者が確認され、大阪府、愛知県、福岡県などで過去最多を更新し、感染拡大に歯止めがかからない状況が続いている。
そんな状況下で、7月21日にモーター大手の日本電産の第一四半期決算発表がされた。売上高は前期比6.6%減の3,368億円だったが、営業利益は何と前期比1.7%増の281億円を計上した。コロナ禍の中、赤字に落ち込む企業が多いと予想される中で、黒字を確保し、前年実績値を上回ったことは驚きである。日本電産は売上高が半減しても営業利益を確保できる構造改革を展開しているようである。日本電産の創業者であり日本のカリスマ経営者の一人である永守重信会長によると、「営業利益281億円のうち100億円は構造改革によって稼ぎ出したもの」ということである。サプライチェーンのグローバル共同購買の拡大、低収益ラインの撲滅、間接経費の削減等を行い収益性を高めたようである。まさに「打つ手は無限」の実践である。株価も右肩上がりで8,400円近い高い株価になっている。
永守氏と言えば数々の有名な語録がある。「すぐやる、必ずやる、できるまでやる」「情熱、熱意、執念」「知的ハードワーキング」の三つを経営哲学とし、経営や仕事において何よりも大切なものは「パッション」であるとの考え方が根底にあるようである。また、①最大の社会貢献は雇用の創出である②世の中になくてはならぬ製品を供給する③一番にこだわり、何事においても世界トップを目指すを経営基本理念に掲げている。これらは永守氏自身の経営に対する考え方であり、その実践が日本電産の急成長の原動力になっていると思う。同時に、永守氏は「企業が求める人材も知能だけの優秀さより、人間としての総合的な感性の豊かさを重視する方向へと転換させていく必要がある」とも言っている。なぜなら感性豊かな人材でなければ、リーダーシップを発揮することができないからである。大きな喜びや苦労した人でなければ他人の喜びの大きさや、相手の本当の苦労はわからない。リーダーにはそういう人間的側面がより強く求められる。従業員にも「たまには、小説を読んだり、美術館にも足を運べ」とよく言っているとのことである。今のようにコロナ禍の厳しい状況下では、不屈の闘争心とともに、そういう豊かな人間性が求められるのではないかと思う。そういう集団になれば、コロナ禍の中でも、利益を確保するのみではなく利益を伸ばすことも可能なのだろう。
※先月取り上げたIT導入補助金の申請が8月末日までできるようになりました。