日本の牛丼チェーンやコンビニチェーンワークマン等の内需企業が、人件費などのコスト削減による安売り競争から高単価商品・サービスの投入等により利益拡大戦略に拡大しているという新聞記事があった。そこで稲盛氏が経営の原点12カ条に掲げている『値決めは経営』という言葉を思い出した。
稲盛氏は「事業において、その収益源である売上を最大限に伸ばしていくためには、値決めが決め手になる。値決めは単に売るため、注文を取るためという営業だけの問題ではなく、経営の生死を決する問題である。売手にも買手にも満足を与える値段でなければならず、最終的には経営者が判断すべき大変重要な仕事である」と言われている。
「値段はマーケットが決めるものである。だから原価に利益を足して値決めをするというような単純な話ではないのである。売上は数量×単価である。その積の最大値を求めるわけである。つまりお客様が喜んで買っていただく最高の値段を探り当てるのが値決めであり、それは一点しかない。最後は理屈ではなく勘である」とも言われている。
つまり利幅の積が極大値になる値段を設定しなければならないということである。これには様々なファクターが入り、どれほどの利幅を取った時に、どれだけの量になるかを予測するのは、非常に難しい。製品なら自社の製品がどれほどのスペックがあり、マーケットの需要がどれほどあるか?ライバル社はどういう製品をどのような値段で売っているか?様々な要素を考慮して決定しなければならない。受注産業なら、自社の仕事の品質、納期等はどう評価されているのか?他社と変わらないのか?その仕事は次の仕事につながるのか?等々多くの要素を加味して値決めをしなければならないということである。だから最後は勘になるのである。そしてそれは真剣に経営に打ち込んで全てのことに精通している経営者しかできないということである。
さらに値決めそのものが経営を大きく左右する。あまりにも安い値段で設定すると、どんなに経費を削減しても利益を出せない場合もあるし、高い値段をつけすぎて山のような在庫を抱え資金繰りに行き詰まる場合もある。値決めは安易にしてはならない。値決めは製品や仕事の評価を問われるものであり、経営者の心や哲学をも反映されるものだろうと思う。まさに『値決めは経営』である。