ここにきて世界経済の減速が懸念され、日経平均株価が乱高下している。早く収まって明るい新年になるようにと願っています。
さて、我々の業界においては、平成30年9月5日に、東京高裁において注目すべき税務訴訟の判決が出た。機械装置の取得時期を巡る事件で納税者が敗訴した判決である。それは機械装置である製品格納自動倉庫システムを請負契約で購入し、期末までに納品された。ところが、不具合が生じて、検収が翌期にずれ込んだが納税者は、期中に事業供用が済んだものとして申告したが、税務署は、期末時点で取得していないとして更正処分をしたという事件である。
Ⅰ課税庁の主張
法人税法31条(減価償却資産の償却費の計算及びその償却の方法)の冒頭にある「内国法人の各事業年度終了の時において有する減価償却資産につき・・・」を課税根拠とし、取得とは、所有権の移転であり、それは完成引渡しを受けたときであり、検収書に押印した時が完成引渡しであり、残代金支払い時が所有権の移転であると主張
Ⅱ納税者の主張
費用収益対応の原則を根拠に、事業年度末時点で減価償却資産を有しているか否かは減価償却資産が法人の事業の用に供され、その用途に応じた本来の機能を発揮することにより実際に収益獲得に寄与する程度に自己の支配下に移されているか否かによって判定すべきとし、使用収益権限を実質的に取得した時が固定資産の取得であると主張
Ⅲ裁判所の判断
固定資産の所有権を法律上取得することか、これと同視できる事情が認められることが、減価償却の大前提である。本件契約による引き渡しは単なる設置のみでは取得とはならず注文者による所要の性能を有することの確認(検収)が必要であるとして課税庁を支持
納税者は最高裁に上告しているのでまだ確定はしていないが、納税者の主張のように、売上さえ上がっていれば、減価償却を開始して良いと多くの実務家が思っていたと思う。しかし、今回の判決により減価償却をするためには、少なくとも検収をしたときでなければならないと整理された。今回のように取得時期の判断で税額が大きく変わる場合がある。今後、期末付近の納品はより慎重な検討が必要である。しっかりと対応していきたいと思う。
皆様には今年も本当にお世話になりました。ありがとうございました。どうぞ良いお年をお迎えください。