7月6日~8日にかけて西日本が豪雨に見舞われ、200人を超える方が亡くなるという未曾有の災害となった。愛媛県でも26名の方が亡くなり、2名の方がいまだに行方不明である。亡くなられた方たちのご冥福をお祈りするとともに、被災された方々に衷心よりお見舞い申し上げます。

その豪雨の中、何とか今年も、日本税務研究センター主催の軽井沢での研修に参加してきた。この研修は毎年財務省の課長、経産省中小企業庁の課長等税制の立案に直接かかわった方々の講演を聞くことができるのが、大きな魅力である。今年のメインテーマは今年制定された事業承継税制の特例である。これは経産省の中小企業庁が庁を上げてその成立に取り組んできた税制である。何故なら、中小企業の事業承継は喫緊の課題だからである。と言うのは今後10年間の間に、70歳を超える中小企業・小規模事業者の経営者は約245万人となり、うち約半数の127万人(日本企業全体の1/3)が後継者未定である。現状を放置すると、中小企業廃業の急増により、2025年頃までの10年間累計で約650万人の雇用、約22兆円のGDPが失われる可能性があるとのことだ。このまま放置すれば大廃業時代が到来し、日本経済を揺るがしかねない大問題となってしまう。特に地方において、事業承継問題は深刻である。事業承継問題の解決なくして、地方経済の再生・持続的発展はないと言っても過言ではない。

そこで中小企業庁はあらゆる方面から切れ目のない事業承継の支援策を策定した。後継者が決まっている企業には税制措置による円滑な承継を、決まっていない企業には気づきの機会提供、またマッチング支援等による後継者探し等々である。その一環として策定されたのが今回の事業承継税制の特例である。これは以前にも紹介したが、ベースは今までの事業承継税制におきながらも①対象株式等の上限の撤廃②対象者の拡大③雇用要件の抜本的見直し(事実上の撤廃)④売却・廃業時の減免制度の創設等とまさに抜本的な改正である。ただ10年の時限立法とし、この間に事業承継を行わないと適用できないことになる。何が何でもこの10年間に中小企業の事業承継を勧めたいという中小企業庁の思惑から策定された税制である。これを上回る改正案はなかなか作られないと思うので、やはり中小企業はこの機会に事業承継を検討すべきだと思う。私共も事務所を挙げて取り組みたいと思っています。

財務省、経産省のいわゆるキャリアと呼ばれる方々の講演は、それぞれの個性が垣間見え、面白かった。税制立案時の裏話を聞くことができたり、省庁間の綱引きも垣間見え、そういう面からも興味深い研修だった。