イギリスで開催されているラグビーワールドカップで、日本代表チームの活躍が強烈なインパクトを世界中に与えた。特に優勝候補の一角に挙げられていた南アフリカ戦の勝利は、スポーツ史上最大の番狂わせとも言われている。
24年間ワールドカップで負け続けていた日本代表が、W杯優勝2回を誇る南アフリカ代表を34-32で破った。 しかも、3点ビハインドでロスタイムに入りスクラムを起点にラックを連取し、パスをつないで最後には逆転トライを挙げるという、文字通り劇的な勝利で、スタジアムを埋めた3万人の観衆を熱狂の渦に巻き込んだのである。 まさしくJAPANWAYと呼ばれる日本の攻撃ラグビーが体現された瞬間だった。
この勝利が奇跡でもフロックでもないことは、その後の日本代表の戦績を見れば明らかである。 3日後のスコットランドには大敗したが、サモア、アメリカには手堅く勝利している。残念ながら目標にしていたベスト8には届かなかったが、日本ラグビーの力を世界に強烈に印象付け、国内外のメディアからは「最強の敗者」と称賛されている。
この勝利の裏には、日本代表を率いるエディージョーンズHCの考え抜かれた戦術と4年間にわたる綿密な準備があったと言われている。 彼は、世界に勝つために選手たちに「ハードワークの文化」と「世界一の練習」を課した。しかも、ただ闇雲に練習するのではなく、まず世界と互角に戦える基礎となるフィジカルを鍛え上げ、スクラムやラインアウトのセットプレーの強化を図るとともに、パスとランに磨きをかけ日本の攻撃ラグビーを作り上げたのである。 それはどうしても体格で劣る日本代表には、守り抜くラグビーはできないので、攻撃ラグビーに活路を見出したからである。 今回の日本代表の活躍は ジョーンズHCの確固たる哲学に基づいた明確な方針のもと、世界一と言われる厳しい練習をこなしてきた選手たちの日々の努力が見事に開花したものだと思う。
これは経営にもつながることである。 業績を上げるためには、優れたリーダー(経営者)の存在が必要である。 優れたリーダーとは強固な哲学を持って明確な目標や方針を示すとともに、その哲学を共有してもらうために、普段から選手たち(従業員)とコミュニケーションを図ることができる人である。 日本代表もジョーンズHCの意図を良く理解し、素晴らしい成長を遂げた。 特に最後のチャンスに同点PGの指示にもかかわらず、自分たちでスクラムを選択して、見事な逆転トライに結び付けたのである。 指示待ち社員ではなく、その結果責任を自分たちが負う決断ができる集団に成長していたのである。 会社であればまさに経営者マインドを持った集団である。 そういう面からも今回の日本代表は素晴らしいチームだった。