昨年11月30日に成立した『納税環境整備に関する国税通則法等の改正』により平成25年1月1日より税務調査が変わります。といってもほとんど今までと変わりません。

 

来年1月1日に先駆けて実験的に今年の10月1日より改正通則法に基づいて調査が行われています。

 

実は23年度税制改正大綱では納税者権利憲章の策定をすると掲載し原案も出来ていたのですが、消費税の増税の際に流れてしまったのです。自民党が反対したとのことですが実際はどんな政治力学が働いたのかは定かではありません。

 

その代替として今回通則法が改正されたのです。先進国では異例のことですが今まで日本には課税納税手続きにおける納税者の権利を制度的に保障する基本法が無かったのです。

 

そこで今回の改正で少しは権利保護がされたのかと精読してみたのですが、残念ながら内容は今までの税務署の調査手法を明文化したに過ぎません。表面上は納税者の権利を認めるように見えますが、「必要があるときは」とか「合理的に推認できる場合」とかという便利な言葉で課税庁の裁量を認めています。今までは質問検査権のみ規定し税務調査が行われてきたのですが内容はほとんど変わらないと思われます。

 

ただ、納税者が変化を感じるのは事前通知の方法でしょう。今までは税理士のみに通知し、税理士が日程等を調整し、当日までは接触は無かったのですが、これからは、①調査日時②調査場所③調査の目的④調査の対象となる税目⑤調査対象期間⑥調査の対象となる帳簿書類等を納税者に通知(電話)することになります。

 

納税は国民の義務です。当然適正納税はしなければなりませんが、もう少し納税者の権利が認められても良いのではないかと思います。

 

今回制定された法令解釈通達の前書きに『調査はその公益的必要性と納税者の私的利益との衡量において社会通念上相当と認められる範囲内で、納税者の理解と協力を得て行うことを十分認識し、その適正な遂行に勤められたい』とあります。今後この精神に基づき調査が行われることを期待します。