昨年の10月に定額減税案という原稿を書かせていただいたのだが、いよいよ6月から定額減税が実施される。すでに皆様ご存じだと思うが、定額減税は納税者本人とその扶養親族1人につき所得税3万円、住民税1万円、合計4万円が今年の税金から控除される制度である。ただし、合計所得金額が1,805万円(給与収入の場合は2000万円)超の方は対象外になる。6月1日以後最初に支払われる給与に対する源泉徴収税額から3万円に達するまで控除される。先日、政府は減税額を給与明細に明記するよう、関連する法律の施行規則を改正した。源泉徴収額○○円、定額減税額△○○円とするか、欄外に明記するとか方法は色々考えられるが、ただでさえ煩わしい作業をしなければならない給与支払者や、関係省庁を中心に非難の声が上がっている。報道によると、今回の定額減税の関係省庁の事務処理に700億円もの費用が掛かるとのこと。
さらに今回の定額減税制度は、減税しきれないと見込まれる方に対し、その差額を調整給付金として支給を行う仕組みになっている。これには正直驚いた。であるなら減税など行わず、対象者に給付金を全額給付すれば、結果的には同じになる。給与支払者等に、煩わしい処理を押し付け、費用も関係省庁等の事務経費だけで、700億円もかかるような減税をする必要があるのだろうか?本当に何をやっているのかと思う。
この調整給付金は、今年の税金が確定し、来年に支給するのだろうと思っていたら、令和5年の所得を基準に類推し、早ければ8月から支給するとのこと。類推で支給するのであれば、例えば、令和5年に非課税の方が、今年の年末にたまたま不動産等を売却して、支給対象にならないような方も出てくるはずであるが、その方たちにも給付するとのことである。そして、給付した金額の返還は求めないらしい。本当に返還を求めなくて済むのだろうか?そのうえ、1円でも控除不足額があれば切り上げて万単位で給付する。まさに、バラマキに等しい。見方によれば、国民を愚弄していると言っても過言ではない。
給与支払者や、関係省庁に煩雑な手続きを要求し、多額の費用をかけてまで、何故、減税にこだわらなくてはならないのだろうか?手続きが大変であることは、財務省関係者等はわかっていたはずである。定額給付をすれば、これほどの手間をかけずに、即効性のある緊急経済対策になったはずである。どう考えても、岸田首相はじめ政治家が、人気取りのために実施したとしか思えない。税金は国民が必死に働いて得た果実の中から支払っている。軽いものではない。だからこそ、真摯に日本の将来を見据えて使わなくてはならないものである。それを人気取りのような政治的な思惑で使うのは厳に慎むべき行為だと思う。