今年も確定申告の時期を迎え、毎日確定申告書の作成に追われる日々を過ごしています。 税制改正も平成29年度の税制改正関連法案が2月3日に閣議決定され、国会に提出され審議中です。 今回の改正案で私が注目したのは取引相場のない株式の評価の見直しです。
今回の改正案は29年1月1日の相続等により取得した財産から適用されます。 突然のように感じますが、実は平成28年度の与党税制大綱の検討事項に、「取引相場のない株式の評価については、企業の組織形態が業種や規模、上場・非上場の別により多様であることに留意しつつ、 相続税法の時価主義の下で、比較対象になる上場会社の株価並びに配当、利益及び純資産という比準要素の適切なあり方について早急に総合的な検討を行う」と明記されていたのでそれを受けた改正と言えます。
少し専門的になりますが、同族株主等に係る取引相場のない株式等(非上場株式)の相続税評価額は評価対象会社の会社区分(大・中・小)に応じ、 類似業種比準方式または純資産価額方式、もしくはそれらの併用方式で計算されます。
類似業種比準方式による株価は、類似業種の株価(上場会社の平均値)と、3つの比準要素(配当、利益、純資産)について、 評価会社と上場会社の比率を用いて算定します。現行評価では、配当・利益・純資産の比重が1・3・1となっていますが、改正案では1・1・1となっています。
今回の改正により、利益の比重が3/5から1/3と小さくなり、同時に配当や純資産の比重が1/5から1/3と大きくなります。 その結果配当が多い会社、内部留保が多い会社の株価が上昇し、利益が株価に与える影響が少なくなります。
昨年、中小企業庁の課長と話す機会があり、現行の評価方法は頑張って利益を出している企業に厳しいので、是非見直しをしてほしいと要望しました。 それは資本力の乏しい中小企業が生き残るためには、高収益企業でなければ難しいと思うからです。 内部留保は厚いが利益が少ない会社は、いずれは立ち行かなくなります。 現行法では、内部留保の乏しい会社を引き継いだ後継者が、必死に努力し利益を上げればあげるほど、相続税の負担が高くなるという笑えない話になります。 そういう意味では良い改正だったと思いますが、業績を上げ続ける良い会社は高い株式評価額に悩まされているのが現状です。 中小企業の事業承継がスムーズになされるためには、現在の事業承継税制をもっともっと使いやすくする必要があると思います。