先の総選挙で躍進した国民民主党が、非課税枠を178万円への大幅な引き上げを要求。与党の自民党、公明党も「年収103万円の壁」引き上げで合意をした。それをきっかけに連日103万円の壁がメディア等に取り上げられている。年収が一定額を超えると税金や社会保険料の支払いが必要となる。その負担により手取り額が減ってしまうのを避けようとして、働くのを控えてしまう問題が「年収の壁」と呼ばれている問題である。現行制度と国民民主党の案は下記のようなイメージとなる。

 

103万円の壁は、配偶者については2018年の税制改正により、「配偶者特別控除」制度が創設され実質解消されている。今回は主に、子供さんたちである扶養親族の問題である。103万円を超えて働くと本人に税金がかかるだけでなく、親等の扶養控除から外れてしまう。扶養控除は38万円、19歳から22歳までは特定扶養控除63万円の控除がなくなってしまうので、親等の税負担が大きく増えてしまう。そこで国民民主党案は扶養控除要件も給与所得控除も含め178万円まで大幅に引き上げ、手取りを増やそうというものである。

良い話ではあるが、すでに報道されているように、問題は税収が大きく減ってしまうことである。特に国に比べて普段から税収不足に悩まされている各地方自治体が、財源の手当てを訴えている。

 

私は、それよりも一番の問題は社会保険料の「130万円の壁」だと思う。国民民主党案の178万円までに非課税枠を引き上げたところで、年収が130万を超えてしまうと、社会保険に加入しなければならない。社会保険料の負担は税金の比ではない。特に健康保険料は扶養に入っていればいらないのに、本人が新たに負担しなければならなくなる。世帯収入でみると、元の手取に回復するのは、本人の年収が151万円の時である。現状のままでは「130万円の壁」が立ちはだかるのは目に見えている。現制度下では、非課税枠は130万円までの引き上げが現実的なところではないかと思う。

今回の課税最低金額の引き上げは税金のみならず、社会保険制度も含めた一体改革が必要になる。現在の制度をリセットするなら、あらゆる角度から議論を深め、後世に残る良い制度を作っていただきたい。