令和7年の税制改正も修正を重ねた末、3月31日に成立した。今回の改正は、年収の壁で話題になった所得税が中心で・基礎控除の見直し(58万~95万への段階的引き上げ)・給与所得控除の55万から65万への引き上げ・特定親族特別控除の創設等・それらに伴う扶養親族等の所得要件の改正等が行われた。
法人税においては・中小企業者等の軽減税率の特例の見直し、延長・中小企業投資促進税制の延長・中小企業経営強化税制の見直し、延長・防衛特別法人税の創設等の改正が行われている。消費税は外国人旅行者向け消費税免税制度が、消費税を含めた価格で販売し、出国時に消費税を返金するいわゆる「リファンド方式」に見直された。
相続税、贈与税については廃止がささやかれていた・結婚、子育て資金の一括贈与非課税措置の延長・事業承継税制の役員就任要件の見直し等の改正が行われている。
事業承継税制を受けるためには、「贈与の日まで3年以上継続して役員等であることの要件が、贈与の直前に役員等であれば良いことになった」これは、今のままでは本制度が適用できなくなる実質的な期限が、適用期限よりも先に到来することになる。本制度を最大限活用できるようにするため役員等就任要件を見直したものである。この改正により令和8年3月31日まで特例承認計画を提出しておき、令和9年12月31日までの間に適用を検討すればよいことになる。ただ、私は事業承継税制の特例が、本当に令和9年12月31日をもって利用できなくなってしまうのだろうかと疑っている。
改正には至っていないが、会計検査院による令和5年度決算検査で、「相続等により取得した財産のうち非上場株式を取得した者間での株式の評価の公平性や社会経済の変化を考慮するなどして、評価の在り方について様々な視点からより適切なものとなるよう検討を行っていくことが肝要である」との報告がなされている。非上場株式評価は、純資産方式、類似業種比準方式、配当還元方式があるが、このうち類似業種比準方式と配当還元方式が問題だと指摘されている。「類似業種比準価額を適用する割合が高くなる大きな会社ほど評価額が相対的に低く算定される傾向があり、評価の公平性が必ずしも確保されているとは言えない。又、配当還元方式の還元率は、社会経済の変化に応じたものとはなっておらず、相対的に高い率になっている」と指摘している。
現実は、非上場株式は換金性に乏しく、立派な会社ほど評価額が異常に高額になり、相続税負担が大きな事業承継の阻害要因になっている。私は、逆に純資産方式の比率を下げるなどし、評価額の低減がされる評価方法に見直すべきだと思っている。これ以上評価額が高額になると事業承継できなくなる中小企業が多くなってしまうと危惧している。