政府・与党は投資用不動産を利用した相続税の節税を防止する法案作成に乗り出すとのこと。かなり本格的な防止策を検討しているようである。基本的には購入から5年以内の相続を軸に調整している。この改正案によると、下記のような不動産節税防止策を年内に取りまとめ2026年度の税制改正大綱に反映させることを目指している。
①タワーマンション(分譲マンション)
2024年の税制改正で、改正前の評価額に区分所有補正率を乗じて評価額を上げる是正措置を講じた。しかし、その後もタワーマンション価格は上昇を続けている。
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評価額が実勢価格に比べて低くならないよう算定式を改正する予定。現在の算定式自体は存置させ、補正率等の見直しをするのではないかと思う。
②賃貸不動産
賃貸マンションなどは入居率が高いほど当然実勢価格は高くなる。しかし入居者が多いと利用の制約も多いということで、借家人が有する権利(0.3)等の評価減を行い実勢価格より低くなっている。現行では下記算式のような評価になっている。
・家屋 (固定資産税評価額-固定資産税評価額×0.3)×賃貸割合
・土地 (路線価-路線価格×借地権割合×0.3)×賃貸割合
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取得が相続直前(5年以内?)なら購入価格をもとに評価額を算定
③不動産小口化商品
高額な不動産を少額に分割し投資しやすくした商品で、複数の投資家が共同で不動産を運用する仕組み。相続が発生すると評価額が実勢価格よりかなり低く(半分以下)なる。
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購入時期にかかわらず売買の実例をもとに評価
現預金を相続するよりも不動産に換えて相続した方が税負担が軽減される。これは相続税の計算上評価の安全性を考慮しなければならないので不動産の評価額が実勢価格よりも低額になることを利用した節税策である。タワマン節税は24年改正により一応是正されたが、賃貸用不動産や特に不動産小口化商品を活用した節税は抜け穴になっていた。以前から賃貸不動産を建築会社等が節税を謳い文句にし販売していたが、近年は不動産小口化商品を不動産会社、金融機関がこぞって販売し業績を伸ばしている。今回の改正案は「購入時期にかかわらず」となっているので全ての購入者が対象になり、節税目的で購入した方は目論見が外れることになる。制度趣旨に基づいた節税は当然利用すべきであるが、法の抜け穴を利用するような節税策はやはり問題である。物事の判断基準は損得ではなく、「何が正しいか」を基準にすべきであると改めて思った。