少子高齢化社会の到来が言われて久しいけれど、先日、国立社会保障・人口問題研究所が日本の人口予測を公表した。出生数は2059年には50万人割れ、2070年には人口が3割減の8700万人になるという衝撃的な内容だった。このままでは国力が縮んでしまう。日本が2030年に現在の成長率を確保するには、労働生産性を2.5倍にする必要があるとのことである。とても実現できそうもない数字である。やはり少子化対策は喫緊の課題である。

企業が生産性を高めることが今後より重要になり、日本全体の課題である。そのためには色々な取り組みが必要であるが、設備投資も当然必要となる。設備投資には一時的に多額の資金が必要になる。自己資金で賄うことができれば問題はないのだが、普通の企業は借入金に頼らざるを得ないのが現状である。そこでお客様からいくらまでなら借入金をしてよいかよく質問されるため、いくつかのメルクマールになるものを取り上げてみた。

・税引き後利益+減価償却費
借入金の返済原資は税引き後利益+減価償却費である。借入金(既存借り入れも含む)を金融機関への返済期間で除し一年間の返済額を算出して税引き後利益+減価償却費を限度に新規借入金を算定する。広く知られている方法である。この際、新規設備投資による予想利益も上乗せするのであるが、あくまで予想なので注意が必要である。好調な受注状況の時に設備投資を考えるので、甘い予測になりがちである。それを前提に借入をし設備投資をしたが、受注が減少し借入金の返済に苦労するというのは珍しいことではない。

・減価償却費と売上の伸長率
減価償却費と売上の伸長率の比較をすれば過大設備投資かどうかの判断指標になる。設備投資をした部門の減価償却費の伸長率がその部門の売上の伸長率を上回ってしまうようであれば設備投資が行き過ぎであるといえる。設備更新は得てして同時期に到来するので当該指標も参考に慎重に判断する必要がある。

・支払利息と売上の伸長率
金利負担額も判断の指標になる。金利についても部門別に集計してその部門の売上の伸長率と支払利息の伸長率を比較して、支払利息の伸長率の方が大きければ借りすぎということになる。償却資産のみならず土地などの非償却資産の取得の場合の指標になる。
借入返済が増えてもキャッシュフローが回ればよいのであるが、借入返済は長期に渡るので、やはり余裕を持った返済計画にしなければならない。そのためにも利益率10%以上の高収益企業が目標になる。また間違わない判断をするためには、損益計算書の分析能力が必要である。少なくとも部門別会計は必須である。また、税制も設備投資をする会社を後押ししている。設備投資減税として即時償却や税額控除制度があります。できれば設備投資前に当事務所にご相談いただければと思います。