昨年の2月24日に始まったロシアによるウクライナ侵攻が一年を過ぎても続いている。昨年は「ロシアの暴挙」として書かせていただいたが、今は「ロシアの誤算」と言っていいだろう。しかし、毎日多くの人が戦争で亡くなり、ウクライナの多くの人々が命の危険にさらされているのは昨年と何ら変わっていない。一刻も早く安全な日々が戻ることを祈るしかない。

昨年12月に令和5年度税制改正の中で、相続税・贈与税の改正について述べさせていただいた。暦年課税では生前贈与を相続税の対象財産に加算する期間を3年から7年に延長する一方、相続時精算課税に新たに非課税枠(110万)を設けて使い勝手が改善された。それも非課税枠の贈与財産は相続時に相続財産に加算しないとのこと。驚きの改正である。新たな相続税対策が可能となり、生前贈与の再検討が必要となった。

相続税は相続人が被相続人から受け継いだ財産に課税され、取得財産に応じて税率が上がるいわゆる超過累進税率になっている。そこで、生前に財産を相続人に贈与し相続財産を減らせば相続税を節税できる。受贈者には贈与税が発生するが、一人につき年110万(基礎控除)までなら非課税である。これが暦年贈与である。

それに対して相続時精算課税とは、贈与時には2500万円(特別控除)までは課税されず、累計で2500万円超になれば一律20%の贈与税が課税される。ただ、贈与財産は被相続人死亡時にはすべて相続財産に加算され精算がされる。つまり相続税の節税効果は基本的にはないとされ、暦年贈与に比べて利用者は少なかった。

ところが今回の改正で前述したように相続時精算課税に年110万の非課税枠が創設され、年110万円までの贈与なら加算不要となった。それに対して暦年贈与は相続開始前3年以内の贈与財産の加算期間を7年に延長された。当然110万以内の贈与財産もすべて加算対象になる。被相続人になる方がかなりのご高齢で相続発生まで時間がなさそうな方が相続財産を少しでも減少させたいなら、暦年贈与より相続税精算課税の利用が有効になる。さらに、例えば父親からの贈与は相続時精算課税、母親からの贈与は暦年課税を選択すれば、相続時精算課税の非課税枠110万円、暦年課税の非課税枠110万円、合計220万円が贈与税の非課税となるようである。ただ、相続時精算課税は一度選択したら暦年課税には戻れない、さらに贈与時の価額が固定されるので、その効果とリスクを慎重に検討しなければならない。当事務所も積極的にご提案等していきますのでご遠慮なく御相談ください。