今年も税制改正の時期が近付いてきた。昨年度は、相続税・贈与税の抜本的な改正を示唆する与党税制改正大綱が発表され、週刊誌等で贈与税の基礎控除(110万)がなくなる、早く相続税対策をしなければ大変な事になる等、不安をあおる記事が盛んに掲載されていた。

昨年度の大綱の概略は下記の通りである。

  • 相続税、贈与税は、税制が資産の再配分機能を果たす上で重要な役割を担っている。高齢世代の資産が、適切な負担を伴うことなく世代を超えて引き継がれることになれば、格差の固定化につながりかねない。
  • このため、資産の再分配機能の確保を図りつつ、資産の早期の世代間移転を促進するための税制を構築していくことが重要である。
  • わが国では、相続税と贈与税が別個の税体系として存在しており、贈与税は、相続税の累進回避を防止する観点から高い税率が設定されている。
  • このため、将来の相続財産が比較的少ない層にとっては、生前贈与に対して抑制的に働いている面がある一方で、相当に高額な相続財産を有する層にとっては、財産の分割贈与を通じて相続税の累進負担を回避しながら多額の財産を移転することが可能となっている。
  • 今後、相続税と贈与税をより一体的に捉えて課税する観点から、現行の相続時精算課税制度と暦年課税制度の在り方を見直すなど、格差の固定化防止等の観点も踏まえながら、資産移転時の選択に中立的な税制の構築に向けて、本格的な検討を進める。
  • あわせて、経済政策として現在講じられている贈与税の非課税措置は、限度額の範囲内では家族内における資産の移転に対して何らの税負担を求めない制度になっていることから、その在り方について、格差の固定化防止等の観点を踏まえ、不断の見直しを行っていく必要がある。

ところがつい最近、基礎控除制度は存続。相続時精算課税制度(贈与時に2500万まで贈与税を免除、超過分は20%課税し、相続時に精算する)においても現在は認められていない基礎控除を認める。相続時に相続開始前3年以内の贈与財産の加算の年数を伸ばす等の記事が新聞等に掲載された。政府税調会長の中里実氏は講演で、「基礎控除制度なしで、全ての贈与を課税するのは現実的でない」「現在は相続時精算課税採用後の少額贈与もすべて相続税の対象になっている、もっと使いやすくすべきである」との意見を話されていた。相続開始前の贈与財産の加算期間についても、「贈与税の時効(6年)や除斥期間(7年)を考慮して決めなければならない。10年とかの意見があるが、実務を考慮しても難しい」との見解であった。税制調査会での議論の結果なのであろう。ともあれ、もうすぐ令和5年度の税制改正大綱が発表されるので、要注目である。