今年もコロナ禍の中、連日確定申告書の作成をさせていただいているが、菅義偉総理大臣は26日に10都府県に発令中の新型コロナウイルス緊急事態宣言について岐阜、愛知、京都、大阪、兵庫、福岡の6都府県を月末までに解除すると表明した。遅ればせながら、医療関係者へのワクチン接種も始まり、やっと収束への一歩が踏み出された感じである。

政府は令和3年度税制改正大綱に基づき今年の1月26日に令和3年度税制改正関連法案を閣議決定し、国会に提出した。ウィズコロナ・ポストコロナの経済再生の後押しをするため、デジタル社会やグリーン社会の実現のため等様々な措置を創設している。同時に「経済社会の構造変化を踏まえた税制の見直し」として個人所得課税のあり方、私的年金等に関する公正な税制のあり方、とともに「相続税・贈与税のあり方」として①教育資金、結婚・子育て資金の一括贈与に係る贈与税の非課税制度の見直しと、②資産移転の時期の選択に中立的な相続税・贈与税に向けた検討が記載されている。

①については令和3年4月1日からの一定の教育資金贈与については、贈与者の死亡時に、管理残高を、受贈者が相続等により取得したものとみなし、贈与者の孫等は2割加算の対象とした。私が一番注目したのは②である。これは現在の相続税と贈与税のあり方を根本から見直す提言である。「諸外国では、一定期間の贈与や相続を累積して課税すること等により、資産の移転のタイミング等にかかわらず、税負担が一定となり、同時に意図的な税負担の回避も防止されるような工夫が講じられている。今後、こうした諸外国の制度を参考にしつつ、相続税と贈与税をより一体的に捉えて課税する観点から、現行の相続時精算課税と暦年課税のあり方を見直すなど、格差の固定化の防止等に留意しつつ、資産移転の時期の選択に中立的な税制の構築に向けて、本格的な検討を進める」と記載されている。

キーワードは格差の固定化の防止である。我が国の贈与税は相続税の累進回避を防止する観点から、高い税率が設定されているが、現在の税率構造では、富裕層による財産の分割贈与を通じた租税回避を防止するには限界がある。①の教育資金贈与も富裕層を中心として相続税対策の一環として行われている場合も少なくない。②については、相続税対策としては何年間にもわたり贈与を繰り返して行うことが一番有効な手段である。税制改正大綱にこのような提言がなされた以上近々に改正される可能性が高い。税制改正は原則さかのぼっては適用されないので、相続税対策を考えておられる方は、今一度、生前贈与の活用を検討する必要があります。贈与で一番気を付けなければならないのは、やったつもり贈与です。せっかくの贈与が無効になる場合があります。詳しくは事前に当事務所にお尋ねください。