12月12日に2020年度の与党税制大綱が発表された。今回の大綱は、持続的な経済成長に向けて、大企業による異業種ベンチャー企業への投資減税や、日本が立ち遅れていると言われる次世代通信規格「5G」の普及を促す税制を柱に据え、増税項目を抑え景気減速に備えた税制といわれている。その結果全体的には小幅な税制大綱になっている印象である。

その中でも注目されたのが、自公の協議で平行線をたどっていた未婚のひとり親の税負担を軽くする新制度が設けられたことである。これは配偶者と離婚・死別した世帯が対象とされている現在の「寡婦(夫)控除」を未婚のひとり親にも適用するという税制である。同時に今まで男性が寡夫控除を受けるには所得が500万円以下となっており、控除額も寡婦が35万円に対して寡夫は27万円にとどまっていた。今後は婚姻歴や性別の違いによる区別がなくなり、ひとり親で所得が500万円以下であれば一律35万円の所得控除が受けられる。

この案は近年、公明党が求めていたが、自民党の中に「伝統的な家族観に背く」という理由で根強い反対論があった。それを押し切り今回の改正になったのは、基本的には、近年とみに言われている法の下の平等という視点から改正されたのだろうが、日本人の結婚観を含めた価値観の変化に対応しなければならなくなった結果なのだろうと思う。私は必要な改正だと思う。

くしくも今年は令和の時代が幕を開けた年である。荒廃から立ち上がり、成長に次ぐ成長を重ねた昭和。一転、無理な成長のツケでバブルがはじけ、停滞の時代になった平成。次の令和の時代はどんな時代になるのだろうか?世界はモノより知恵が力をもつ時代となった。プラットホームサービスにより集積された個人情報をビックデータとして活用してGAFAと呼ばれる企業群が絶大な影響力を世界中に及ぼしている。

それに対して今の日本は1997年から21年間で平均賃金は8%も減少し、GDPは3%弱しか増加していない。価値観の多様性は悪いことではないし、必要なことだと思う。しかし、人間はともすれば楽なほうに流れがちである。結果が出ないのは原因があるはずである。価値観の多様性という名のもとに安易な道を選べば世界から日本は取り残されてしまう。今こそ日本の生産性を高め、賃金増と経済拡大の好循環を作り、人口減と高齢化を乗り越え素晴らしい令和という新時代を築いていかなければならないと思う。

今年も皆様には大変お世話になりました。どうぞ良いお年をお迎えください。来年もよろしくお願いいたします。