1月22日から第196回通常国会が開催され30年度の予算等が審議されている。当然多くの税制改正案も審議されるのだが、そのなかでも事業承継税制がかなり思い切った改正案になっているので内容を紹介します。具体的には次のような改正案です。

①猶予対象の株式の制限(発行済議決権株式総数の3分の2)を撤廃し、取得した全ての株式が対象 万感の思いが伝わってきて、その姿に稀勢の里のファンに限らず、多くの人が胸を打たれたと思う。

②相続税の納税猶予割合を80%から100%に引き上げ、贈与の場合と同様に、全額が猶予となる

③先代経営者1人からの承継のみが適用対象になっていたのを、代表者以外の者を含む複数人からの承継も適用対象

④代表権を有する又は代表権を有する見込みである後継者1人への承継のみが適用対象になっていたのを、代表権を有する複数人(最大3名)への承継も適用対象

⑤経営承継期間内の一定の基準日における雇用平均が贈与又は相続時の雇用の8割を下回った場合に納税猶予が打ち切りになるのが、8割を下回ったとしても、要件を満たせない理由を記載した書類を都道府県に提出すれば納税猶予は継続できる

⑥譲渡、合併、解散等により猶予確定に該当した場合、贈与時・相続時の相続税評価額を基に計算されていた納付税額が、株式の譲渡もしくは合併の対価の額又は解散時の相続税評価額を基に再計算し、当該税額が当初の納税猶予税額を下回る場合、差額は免除される

⑦相続時精算課税制度の適用対象者が贈与者の直系卑属でなくとも、贈与を受けた年の1月1日において20歳以上である特例後継者は適用対象になれる

⑧特例制度を活用するには、5年以内(平成35年3月31日まで)に特例承継計画を提出し、認定を受けることが必要になる

以上のように①②により、贈与時のみでなく相続時の納税負担が生じないようにするとともに、③④により贈与者側・後継者側の対象者を拡大している。そして一番大きな改正が8割の雇用維持要件の弾力化である。一番の打ち切りリスクが大幅に緩和された。⑥⑦も猶予打ち切りの場合の緩和策です。ただ⑧において特例承認計画の提出・認可が必要とされています。これには認定経営革新等支援機関の助言が必要になります。依然、適用者の死亡時まで打ち切りリスクは残るという点と、10年間の特例措置という点が気になりますが、使い勝手は格段によくなりました。ただ適用に当たっては多くの注意点があります。また当事務所は認定経営革新等支援機関ですので気軽にご相談いただけたらと思います。