盛和塾という稲盛和夫氏の経営哲学を学ぶ会(世界中70塾、塾生約7千名)があるのだが、その盛和塾で毎年世界大会が開催されます。その大会は稲盛経営哲学を学ぶ世界中の経営者の中から8名が選出され自分の経営体験を発表するというもので、いわば経営者の甲子園といってもよい大会です。

今年も世界中から約4千名の塾生が集まり、8名の経営者の心を打つ素晴らしい発表がなされました。その中で今年は回転寿司の経営をされているS氏が最優秀賞を受賞されたのだが、その内容は正に驚きでした。

S氏はもともと小さいときから極度の赤面恐怖症で、学校の校門が近づいてきただけで赤面し、男女を問わず人となかなか話せず、学校ではいつも四隅に黙って座っているような人物だったとのことです。成人して15年間スナック経営をしていたのだが赤面恐怖症は直らず、しらふでは人となかなか話が出来ないのでお酒を飲んでから出勤していたとの事です。それでもスナック経営を頑張っていたのだが、頑張っても、頑張ってもなかなか結果がでなかった。そんな中いつしか『何のための人生か』、『何のための経営か』を悩み始め、その答えを捜し求めていた時に稲盛氏の経営講話のカセットテープに出会い、それこそ取り憑かれたように聞き狂ったとの事です。

そこには『経営することの意義』、『何のために働くのか』、人生の根本、人間の本質が、理論的に整然と語られており、正に暗闇の中に一条の光明がさしたと言われました。そこからS氏は稲盛経営哲学をもとに、その哲学を従業員と共有することに努め、自身の心を高めるべく研鑽を積み、誰にも負けない努力を重ねた結果、当初のS氏の運命の筋書きにはなかったはずの物語が展開され、46歳からたった13年間で寿司店11店舗を運営し、23億もの売上、従業員476名を擁する企業の経営者に成長されています。

まさにドラマを地で行く話しでした。人生は考え方次第で大きく変わることを体現された人です。S氏は自分の弱さを稲盛フィロソフィーに求め生きてきた結果であると話されましたが、その際立った人生の変遷は驚きそのものでした。

ただただ、稲盛氏にその話をしたい一心で発表者に応募したといわれ、稲盛氏への感謝と敬慕の念がひしひしと伝わってきました。大きな感銘を受けると同時に人間には無限の可能性があるとあらためて感じることが出来る発表でした。