国税庁は8月20日に「取引相場のない株式の評価に関する有識者会議」で評価方法の見直しの方向性を明らかにした。現在は会社規模に応じて3段階の評価方法になっているが、その区分を廃止し、広範の会社を共通の評価方式に一本化するとのこと。新しい評価方法は(簿価純資産+5年間の当期利益)×一定の定数 で計算するようである。5年間の当期利益はマイナスの場合は減算する。この方式で計算すると規模が小さい中小・零細企業は税負担が減る見通しである。しかし、収益力が高く規模が大きな会社の評価額は現在の類似業種比準価額より評価額が上がり、相続税・贈与税の負担が増す傾向になるようである。

 

今後は2026年12月頃、令和9年度の税制改正大綱に反映させる見込みである。2027年春頃には財産評価基本通達の改正案についてパブリックコメントを実施予定である。2028年1月以降、新ルールを相続・贈与に適用することを目指す。これは相続税率の引き上げや基礎控除額の縮小が目的ではなく、不適正事案への対応と適正・公平な課税を目指すとの見解である。

 

現行の事業承継税制の特例措置は、特例承認計画の申請期限が2027年9月末、特例措置による贈与・相続実行期限が2027年12月31日と、今回の評価見直しとほぼ同時期になっている。現行のままであるなら2026年12月に税制改正大綱が決定され、そこから2027年12月までが「駆け込み承継」の時期となり、評価額が上がる前に特例措置の期限内に承継を済ませようとする中小企業オーナーが集中する可能性がある。

 

ただ評価ルールを厳しくするだけでは、過大な税負担が生じ地域経済を支える中小企業に大きな影響を与え、事業承継や企業成長を阻害してしまう。そこで経済産業省は、現行の事業承継税制で中小企業の一番のネックとなっている相続税・贈与税の猶予を、免除とする方向で検討する。成長投資や賃上げに取り組む企業を対象とする。現在は猶予となる期間が長く、将来的に納税を求められる懸念が消えないので、制度の利用に及び腰になるケースや、設備投資などに資金を振り向けられないという傾向が強い。免除にすることにより税負担の予見性を高め制度利用を勧める意図のようである。

 

今回の評価方法の見直しは大会社・中会社規模で、類似業種比準方式の恩恵を受けてきた優良法人(高収益・高純資産)のオーナーは影響が大きい。そこで現行ルールの株価と、見直し案の想定株価を試算し、その差を把握しておく。そして事業承継計画の申請・実行を含め2027年にどう動くかを準備するとともに、今後の有識者会議の議論・税制改正大綱・パブリックコメントの内容を継続的にチェックし、対応方針を随時見直しする必要がある。