申年は「騒ぐ年」になるという格言があるようだが、まさに格言通りの波乱の幕開けになっている。 何十年かぶりの大寒波が襲来したり、なんといっても株式相場が連日大幅に下落し、昨年末の19,033円から約17,000円に下落してしまっている。 株式の下落要因は、中国に対する懸念、米国の利上げ、原油安、中東等の地政学リスク等々の理由が挙げられているが、ここにきて実体経済まで一気に不透明になってきた。
そんな中でも、不透明だからこそなのかもしれないが、相続税の節税に関する記事等がよく目につく。 先日(1月24日)の日経新聞の一面にもタワーマンション節税の記事が掲載されていた。
タワーマンション節税とは、相続税評価額と実勢価格とのかい離を利用した節税策の一つである。 このスキーム自体は珍しくないのだが、タワーマンションのかい離率は、国税庁の調査によると平均約3倍にもなるという。 1億円で購入したマンションが相続税評価額は3,000万円になるというものである。かい離率が高いので、平成27年1月の相続税増税をきっかけに節税目的でタワーマンションを購入する人が急増していたようである。 一人で5戸や10戸も節税目的で購入する富裕層もいるようである
24日の日経新聞によれば、その節税策に歯止めをかけるため、国税庁と総務省がタワーマンションを買った人の税負担を大幅に増やす改正案を今秋にもまとめ、早ければ平成30年1月から実施する予定とのことである。 その内容は実勢価格に合わせて高層階に行くほど税負担が増加するよう総務省令を見直し、例えば高層階の20階は一階の10%増、30階は20%増とういうかたちで一定の補正率を導入し、眺望が良好な好条件の高層階ほど相続税負担が増加し、逆に低層階は評価額を下げて相続税負担を減少する改正案を予定しているとのことである。 節税目的でタワーマンションを購入した方は、平成29年までに死亡しなければその効果が半減してしまうという笑えない話になる。
この種の節税策は、当局との「いたちごっこ」の様相を呈している。しかし節税目的のみで物事を判断するのは間違いである。 それは自分の欲で物事を判断してしまっているので、リスクが見えなくなり、今回のように後で思わぬマイナスが起こることは少なくないからである。 投資は本来リスクを伴うものである。特に多額の投資をする場合には、効果とリスクを検討して慎重に行わなければならないということである。