安倍総理がデフレ脱却のために、経済界に賃上げを求めているが、その対応は企業間で差があるようである。というのも企業間で業績の違いもあるが、賃金はいわゆる固定費を代表する経費で、一度上げると業績に係らずなかなか下げることができない経費なので慎重にならざるを得ないのだと思う。

人件費に関する代表的指標が労働分配率である。労働分配率=人件費÷付加価値の算式で計算される。付加価値とは企業が生産、販売等の活動により新しく生み出した価値をいう。具体的には売上高-外部購入費用(仕入、原材料、外注費等)で求められる。企業経営にとっては当然低いほうが良いということになる。

労働分配率が高い会社は、人件費の配分が多いことから、給料が高い会社、あるいはサービス業のように人手に依存しなければならない会社、あるいはこれが一番問題なのではあるが、付加価値の総額に対して人件費が多くなってしまっている会社等が考えられる。業種の特性なのか自社の問題なのか理由を正確に分析する必要がある。

ちなみに平均的な労働分配率は、建設製造業等では50%~60%、卸小売業等では50%前後、サービス業は大体60%台である。

労働分配率は一般的に生産性の指標として用いられるが、実は経営効率そのものの指標だといえる。赤字企業の労働分配率を見てみると、70%から80%もの数字になっており付加価値のほとんどが人件費に支払われており、その他の経費が足りなくなって赤字に陥っている。

これはなかなか根が深い問題である。この現実を逆から見ると、この人件費をかけなければ売上が上げれない企業体質に陥っている会社である。労働分配率が高い会社の社員が遊んでいるのかといえば当然そうではない。改善するには商品そのもの、又は売上先を見直すとか、小手先ではなく、事業形態自体を変化させなければ対応できないのである。

大切なことは労働分配率が高くなり始めたときに、如何に早く対策が打てるかである。放置すればそれが企業体質となり容易には改善できなくなる。理想的な会社は労働分配率を下げながら、従業員の給料を上げていける会社である。そのためには利益率が高くなければならない。ここに努力と知恵が必要になってくる。簡単ではないが、多くの企業がそのような会社になることができればデフレなどすぐに脱却できるはずだと思う。