7月20日に投開票された第27回参院選では、自民が52議席から39議席に、公明は14議席から8議席に大幅に議席を減らした。目標に掲げた50議席を下回り、衆議院に続き、参議院でも、過半数を割り込んだ。今回の投票率は58.52%で2022年の参院選の投票率(52.05%)より上昇し、また全ての都道府県で前回を上回ったとのことである。国民の選挙への関心が高まり、その結果、国民民主党や参政党と言った様々な政党が躍進した。まさに今の時代を反映した結果だと思う。政治家の皆様は今後の日本を託されたのであるから、より良い日本にするため全員が真摯に議論を重ね、一生懸命取り組んでいただきたい。
参院選でも「手取りを増やす」が争点の一つになっていた。税金に関しては2025年改正で年収の壁がかなり引き上げられた。給与収入の103万の壁が123万に引き上げられ、123万以下なら原則所得税もかからないし、扶養控除の対象にもなる。また大学生などの特定親族(19歳以上23歳未満)については、バイト等の収入金額が150万円以下なら親等は63万円満額の特定親族特別控除を受けることができる。配偶者の場合は160万円以下であれば38万円の配偶者特別控除が満額受けられる。税に関しての年収の壁はかなり引き上げられ、今後年収の壁を意識して就業調整をする動きは抑えられると思われる。
問題は社会保険料に関する年収の壁である。社会保険料に関する壁にも2種類あり、「106万円の壁」と「130万円の壁」がある。いずれも社会保険料の支払いが発生するラインを示すもので、「106万円の壁」は、厚生年金・健康保険に関するものに対し、「130万円の壁」は、被扶養配偶者の国民年金・国民健康保険に関するものである。
「106万円の壁」とは①年収106万円以上②従業員数が51人以上③所定労働時間が週20時間以上④継続して2カ月以上雇用見込み⑤非学生の要件を満たせば、社会保険に強制加入となり、世帯で健康保険料を2人分支払うことになるので手取り額が大幅に減少する。先日の年金制度改革法案により①の年収基準は3年以内、②の企業規模要件は10年かけて撤廃される。②の企業規模要件で救われていた多くの中小企業は、今後パート人材が就業調整すると考えられ、この改正により人出不足に追い打ちをかけることになると懸念される。「パートは一日4時間の勤務がリミット」として定着していくのかもしれない。
「130万円の壁」は年収が130万以上となると第3号被保険者に該当しなくなり、国民年金・国民健康保険に加入し保険料を自己負担しなくてはならなくなる。今回の改正では見直されなかったが、上記②の企業規模要件の廃止に伴い130万円の壁は実質なくなっていくと思う。新しい年金制度により、就業調整が加速し、人出不足が過熱しないことを願うばかりである。