今年も日本税務研究センターの軽井沢研修に参加してきた。なかなか刺激的な三日間であった。 中でも政府税調の中里実会長の講演で、 近年グーグルやアマゾン等が行っているとされる税源浸食または利益移転を図る国際的税務プランニングに対するプロジェクト、 いわゆるBEPSプロジェクトの話は興味深かった。とんでもないことが堂々と行われているようである。 詳しくは次の機会に述べたいと思う。
今回の研修で気になった点の一つに贈与税がある。政府は景気刺激策の一環として贈与税の非課税枠を次々と策定してきたが、 金持ち優遇税制ではないかとの批判があり、与党の税制改正大綱には『格差の固定化につながらないよう機会の平等や世代間・世代内の公平の実現、 簡素な制度の構築といった考え方のもと、不断の見直しを行わなければならない』と書かれている。 近い将来贈与税の非課税枠の見直しが行われるのは必至である。贈与は相続税対策では最も有効な手段の一つである。 そこで非課税枠等を改めて整理してみた。
(1)贈与税の基礎控除
一年間に贈与を受けた財産のうち基礎控除額110万までは贈与税は課税されない。
(2)住宅取得等の贈与税の非課税
贈与を受けた年の1月1日に20歳以上の子または孫が直系尊属から住宅を取得するために受けた贈与は、 平成28年1月1日から平成29年9月30日までの新築等に係る契約については省エネ住宅等1,200万、一般住宅700万までが非課税となる。 平成31年6月30までは、非課税枠は小さくなるが存続する。
(3)教育資金の一括贈与時の非課税
個人が直系尊属から教育資金の贈与を受けた場合は1,500万まで非課税となる。 ただし30歳時に資金が口座に残った場合は、残額に対して贈与税が課税される。
(4)結婚・子育て資金の一括贈与時の非課税
20歳以上50歳未満の個人が、結婚・子育て資金のために直系尊属から受けた贈与は1,000万まで贈与税が非課税となる。 ただし50歳時に資金が口座に残った場合は、残額に贈与税が課税される。また贈与者が死亡すれば、残額は相続財産に算入される。
(5)贈与税の配偶者控除
婚姻期間が20年以上の配偶者からの居住用不動産またはその購入資金の贈与は2,000万まで非課税とされる。
そのほか相続時精算課税制度があるが、使い方を誤ると税負担が重くなるので注意が必 要である。また上記の項目についても、細かい規定や、予想外の課税がされることがありますので、適用にあたっては必ず事前にご相談ください。