9月19日に日本航空が東京取引証券所に再上場した。会社更生法の適用から再上場まで2年8ヶ月という異例の早さである。当日は各メディアがその再生できた理由を色々と述べていたが、総じて経費削減に成功して高収益企業に生まれ変われたことと、再生支援機構からの資金の確保を大きな要因に挙げていた。

 

私はそれに違和感を覚えていた。肝心な点が触れられていなかったからである。そんな思いを抱いていたところ、日経新聞の社説で3つの再建理由を挙げていた。その中でも稲盛和夫氏の強力なリーダーシップを第一の要因に挙げていた。そのとおりだと思う。長年染み付いた日航の官僚体質、ぬるま湯体質を劇的に変えることが出来たのはやはり稲盛氏の強力なリーダーシップにほかならないと思う。

 

稲盛氏が日航でまず手がけたことは、幹部の研修だった。研修は土曜日を含む週4日も開催された。それでは日常業務ができないという強い反発もあったが、『何のために働くのかを始め人生の目的とか根源的な考え方』、つまり稲盛経営哲学、フィロソフィーの要諦を徹底的に研修したのだと思われる。その中で何を今さらそんな事と思っていたエリート幹部たちの心が変わっていったのが再建できた一番の理由である。長時間のディスカッションの中で、『自分たちは傲慢だった』、『お客に向き合っていなかった』、という言葉が自然に出てきて、幹部たちの心が変わり、彼らを通じて心の変化が全社的に広がっていったようだ。

 

実際に今の日航の接遇は明らかに良くなっている。機長の機内アナウンスも本当に乗っていただきありがたいという感謝の想いが伝わってくる。そこが日航再建の原点だと思う。

 

フィロソフィー教育の後に稲盛氏の代名詞であるアメーバー管理会計を導入し、コスト意識を徹底させたのである。この順番を間違えると再建は無かったと思う。

 

稲盛氏も当初は悲壮な覚悟で再建を引き受けたようだ。実は盛和塾の塾生も一様にその困難さや稲盛氏の年齢(80歳)を考えて心配していたのだが杞憂に終わった。やはり稲盛氏は超一級の経営者でありレベルが違うと思った。

 

ただ、再建の過程で思いもよらない横槍が度々入ったようだ。そんな中でも異例の早さで再建できたのは奇跡に近いことだと思う。そんな経緯を日経新聞が9月24日から9月29日にかけて特集している。興味のある方は読んでみられたらよいと思う。