今年も慌ただしく年末を迎えていますが、皆様にとって今年はどのような年だったでしょうか?12月12日に毎年恒例の今年の世相を表す漢字として「税」が選ばれた。消費税率が引き上げられた2014年以来、2回目であるとのこと・1年を通して防衛力強化や、子育て支援のための増税の議論が行われた・所得税等の4万円の定額減税が話題になった・インボイス制度やふるさと納税など、多岐にわたる税にまつわる話題が取りざたされたことなどが理由のようである。

今年の話題にはなっていないが、相続税、贈与税に深くかかわる「贈与と名義預金」についてふれてみます。先日令和3年に申告した相続税の税務調査がやっと決着した。かなり長引いたのだが、理由は家族名義の預金の扱いである。相続税の税務調査では家族名義預金のチェックは必ず行われる。一生に一度しか発生せず、金額も大きくなる相続による財産移転については、税務署は過去にさかのぼって非常に細かく入念に調べる。過去の贈与についても必ずチェックされる。名義預金とは一言でいえば、原資が預金名義者以外(被相続人等)である預金のことである。そういう預金があると預金の名義が家族であっても、実質的には被相続人の財産だとして、相続税の課税対象になると税務署は指摘する。家族が贈与財産として贈与税の申告納税していれば税務署がそれを名義預金として相続税として課税するのは困難であるが、「贈与として申告納付していない以上は、これは贈与ではなく、名義預金です」と言って贈与の成立を認めようとしない。税金にはその間に権利を行使しなければ、その権利が除外されるという除斥期間がある。通常は法定申告期限から5年とされているが、贈与税だけは例外で6年とされている。本当に贈与が成立していれば6年以上前の贈与を贈与税として課税することはできない。そこで名義預金として相続税を課税しようとするのである。

民法549条で「贈与とは当事者の一方が財産を無償で相手方に与える意思を表明し、相手方が受託をすることによってその効力を生じさせる」と規定されている。親が子供名義で預金し親が管理している場合がある。これでは贈与は成立しない。つまり典型的な名義預金となる。相続税対策として何年間にもわたり贈与を繰り返して行うことは有効な手段である。有効に贈与を成立させるには①贈与契約書は贈与の都度必ず作成する②金銭を贈与する場合には、受贈者の使っている口座へ振り込みで行い、贈与の履歴がわかるようにしておく③贈与された金銭は少しでも良いので受贈者本人のために使用する④年間110万円を超える贈与を受けた場合は必ず贈与税の申告をする等々注意点が多々ある。細心の注意が必要である。詳しくは当事務所にお尋ねください。

今年も皆様には大変お世話になりました。どうぞ良いお年をお迎えください。来年もどうぞよろしくお願いいたします。